第3話
*捏造満載です。三郎の家族とか、三郎の素顔とか出てます、苦手な方はブラウザを閉じて下さいませ。*
宿場に帰ってから、一番落ち込んでいたのは他でもない久々知だった。
部屋の隅で、膝を抱えて溜息ばかり吐いている。
むしろ、鉢屋の屋敷の前で大騒ぎをした雷蔵の方が元気なくらいだ。
其の様子を見ながら竹谷は首を傾げた。
何で、こいつの方が落ち込んでいるのだと運んで貰った夕餉を食べながら部屋の隅を見つめる。
雷蔵もちらちらと其方へと視線を送っていた。
「なぁ…雷蔵、何で兵助あそこまで凹んでるんだよ?確かに三郎の実家の事は俺も、びっくりだったけど。ちょっと…尋常じゃなくないか?」
幾らなんでも、と言われて雷蔵は「そうだね」と苦笑を零した。
(そうか、兵助も三郎もハチにはまだ話してないのか…)
雷蔵は部屋の隅で蹲っている友人へ、もう一度視線をやった。
二人が付き合っていることを秘密にしたいと言ったのは三郎の方だったけれど、自分にだけは話してくれた。
それも兵助には許可をとってないから、それも秘密だと言ってたけど、と雷蔵は悩んだ。
(言ってしまった方が説明は楽なんだけどなぁ…)
良いのかなぁ、と竹谷と久々知、両方を見やって溜息を吐く。
どうしてそんな面倒な事をしたのだろうと、少し前に聞いた話を思い出した。
ちょっとはにかんだような笑みで「兵助に、好きだと言われたんだ」と言った"親友"は、酷く幸せそうで、胸が痛くなるほどだった。
それを思い出して、まだ雷蔵の胸の奥が痛くなる気がする。
ちくり、等という擬音語は似つかわしくないような、むしろ鈍痛に近い、じわじわとした傷み。
小さく息を吐いて、雷蔵は軽く息を吐いた。
「…実はね、ハチ。兵助と三郎、この間から付き合ってるんだ。それで彼処まで凹んでるんだよ、きっと」
からん、と竹谷の手から箸が落ちる音がした。
焼けに響いた雷蔵の声に久々知もはっとしたように顔を上げる。
「ら、雷蔵、知って…」
「兵助と三郎が…」
殆ど同時に発せられる声に、まぁ、そんな反応だろうなぁと雷蔵は食後の茶を啜った。
「兵助!お前、衆道だったのか?!」
「ちっげぇよ!男でそういう意味で好きなのは三郎だけだ!」
誤解を招く言い方するな!と流石に兵助も立ちあがって、座卓の方へとやって来る。
「ってか、雷蔵、知ってたの?」
隠してたつもりだったのにと言いたげな様子に、雷蔵はえー…と笑い混じりに返事をした。
「ってか、三郎が僕に隠し事出来ると思ってるの?ちゃんと聞いてたけど、三郎が黙っててって言うから言わなかっただけ」
あ、今回の件は別だけど、ね、と雷蔵が続けた。
「そっか…」
「ってか、じゃあ俺だけか?知らなかったの…」
はぁ、と竹谷は盛大に項垂れてしまった。
まさか、友人の内二人がそういう関係になって、一人は知ってて知らぬふり、自分は今まで知らなかったとくれば落ち込むのも当然と言えば当然だった。
「…ま、まぁ、三郎も兵助も恥ずかしかったらしいし。何時かは言うつもりだったって言ってたから。そんなに落ち込まないでハチ」
「…良いよ、何か一人で落ち込んでるだけだから。直ぐに戻る…」
うん、と竹谷は小さく溜息を吐く。
その様子に久々知も小さく笑った。
「すいません、お客さん。お客さん達に用がある方がいらしてるんですが…?お通ししても…」
襖の向こうから声を掛けられて、三人がはっと顔を上げた。
『鬼が出るよ』
と、そんな三郎の声が頭の中に響く。
久々知がん、と頷くと襖と両隣に雷蔵と竹谷が立った、気配を殺しながら懐に忍ばせた苦無を手にする。
「…どうぞ」
そう久々知が返事をすると「へぇ」という店主の声と供に襖が開いた、と、同時に二人が苦無を突き付けようとして、その動きを止めてしまった。
「…どうか、刃物を納めて頂きたく。こちらもあまり手荒な真似はしたくありませんので」
真ん中に立った若い女は、袖からきらと光る物を覗かせている。
手練れだ、と直感的に思ったのは女の口調からか、その表情からか。
どちらにせよ、自分達よりも遙かに実力のある忍びであることは見て取れた。
三人は顔を見合わせて、苦無を懐にしまった。
その様子に女は「有難うございます」と、その怜悧な目をやんわりと歪ませた。
「流石は三郎様のご学友で。ご自分の身はご自分でと解っておいでです」
良かった、と言うように言い募りながら女は襖を後ろ手に閉めて、三人の前に膝を突いた。
「三郎様って…もしかして、三郎の家の…」
「はい。三郎様のお母上様にお仕えさせて頂いている者です。今回はそのお方様の命でこちらに」
「……三郎のお母さん」
はい、と頷いた。
「お方様は側室とは言え、自由に出歩くことの出来ぬ身ですから。私を代わりに寄越されました。どうか、三郎様を助けて欲しいと…申しておいでで…」
女は微かに眉を下げた。
母親の話を聞けば、え、と小さくつぶやく。
母親は承諾したわけではないのかと、意外な気持ちだった。
「三郎様は男の子(おのこ)と言えど、妾腹からの三男。あまりお立場は強くはないのです。それにお方様ご自身もあまりお強い立場ではなく…。旦那様の命令には逆らうことは出来ません。殆ど、今回のお勤めのことは旦那様の一存で決まってしまって。お方様はそれでお心を傷めておいでで。どうして自分の子なのに守ることも出来ないのかと。それで、偶然昼間の騒ぎを耳にされて…。私をこちらにお寄越しになった次第です」
そう言って女はそっと手をついて頭を下げた。
畳みにその額がつきそうな程に、深く深く頭を下げていた。
「どうか、お願い致します。私も三郎様のお小さい頃を覚えています。お方様と引き離されるも同然で、毎日旦那様の攻めにも似た鍛錬に耐えてこられたのに…。この扱いはお家のためとはいえあんまりです。こちらで出来ることは何でも致します。私達が大っぴらに動くことは出来ませんけれど…。助けて頂いた後のこと…道中の路銀も、残りの学費も、仕送りも全部お方様が工面するとおっしゃっておられます。どうか…三郎様をお助け下さいませ」
そう言って、女はなおも頭を下げ続けた。
初めて知った、と三人は顔を見合わせる。
そんなこと三郎は一言も言ったことはない、むしろ家の事は一言だって喋りたがらなかったのだ。
それはそんな環境がなせる事だったのかと、何も知らなかった自分達が情けなくさえある。
なら、彼は今どんな気持ちであの城に居るのだろう。
「…元々、僕達はそのつもりで来たんです。三郎がどうして学園を出て行かなくちゃいけないのかとか。本当はその理由が知りたかっただけだったけど」
そんな話を聞けば、黙っていられるわけなど無いのだ。
特に、と竹谷と雷蔵は自分の間にいる久々知を見やった。
先ほど解ったこととは言え、こちらもどんな心境だろうと。
「そのお話、お受けします。三郎は…私達の大切な友人ですから」
そう返事をすると女はさっと顔を上げて「有難うございます」と今にも泣きそうな笑みを浮かべた。
「三郎の学友?」
経久の所にその話が来たのは彼がゆったりと酒を飲んでいる時だった。
ゆらりとそれが彼の口に運ばれるたびに、盃に注がれたそれは波紋を拡げる。
「……それは、また。どういう理由で?」
彼は天井裏にある気配に向かって問いを投げかける。
乱を起こし、城に戻ったとはいえ経久の周りは安全とは言い難かった。
それ故に、幾人かの忍びを町中に放つように鉢屋に命じていたのだ。
三郎の父親の命令で放たれた彼等は、自分の主意外には非情になれと言われていた。
それが喩え、同じ家紋の人間であってもと命じられている。
ふぅん、と経久は酒を運びながら考えるようにつぶやいた。
「三郎様を連れ戻しに来たのではないかと」
「まぁ、其れ以外に理由などないが…。随分、未熟よのう…」
気取られすぎではないか、と楽しげに彼は喉の奥で笑った。
それに大して気配は特に返事はしない、むしろ「如何されますか?」と自分達が如何に動くべきかを問うてきた。
「良い。捨て置け……子供が何処まで出来るか、見てみるのも面白いからな。貴様等は手出し無用と心得よ」
「御意」
そう言って、気配はさっと天井裏からそれ自体を消す。
くく、と経久は小さく笑う。
やっぱりかと何処か解りきっていたような笑みだった。
「…あれほど、この話はあやつが卒業してからで良いと言っておいたのに。逸りすぎだ、鉢屋」
掌を返されるぞ、と彼は呟きながら盃をおいて立ちあがった。
そろそろ支度が出来ている頃かと、部屋を出て寝所に向かう。
彼に取って、周りがどう動いているのかなど関係なかった。
漸く手に入れたあの美しい『鬼』を、どう鳴かせるか。
今はそればかりが楽しみだった。
寝所に行くときは侍女が呼びに来ますと言われて、三郎は部屋に通されていた。
部屋にある物は大分金を掛けてあるらしく、上等の物ばかり。
自分のためにこれだけ金を使ったのかと思うと、大名という者は本当に物好きだと思う。
むしろ、あの男が物好きなのかと溜息を吐いた。
部屋に備え付けられた鏡は、曇りなく磨かれていた。
すべらかなそこにそっと手をやって、鏡に映った自分の素顔を見つめる。
これを見せる相手は家族と主のみ。
その教えは絶対で、自分の生まれた家を恨むしか術など無かった。
「…雷蔵の顔のままって言うのは、流石に悪いよな」
雷蔵に、ともう帰ってしまったかも知れない親友の事を想いだした。
そっと鬘を取れば、彼の地毛である母親譲りの美しい黒髪を包む布が現れた。
それをそっと解けば、艶やかなぬれ羽色の髪が姿を現す。
結局実家に戻っても母親とは一目も会っていなかった。
反対は…きっとしてくれたのだろうけど、それを父親が許すわけもないとぼんやりと思う。
仮面に手を掛けて、その奥を晒そうとした。
だが、結局はそんな事など出来ない。
見たくない、と心から思った。
まだ、彼にも見せていないこの顔を、あの男に見せるのは忍びなかった。
もう、彼の顔として馴染んでしまった雷蔵の顔にそっと手を当てる。
久々知と恋仲になったと伝えたとき、雷蔵は一瞬驚いてそれからにこりと笑って「良かったね」と言ってくれた。
久々知と恋仲になっても、自分達はまだ口づけしかしていない。
それだけで互いに照れて、それ以上が出来ないでいたのに。
「……兵助にも悪いことをするんだな」
そう言って三郎は目を細めた。
あの時、一瞬怯んだ彼を見て、感じたのは落胆でも何でもなく、ただ単に顔を見れて嬉しかったと言うことだった。
ほんの少しでも彼の顔を見れたのは良かったのか、悪かったのか。
ぐ、と三郎は息を飲んで目を閉じる。
揺らいでしまう、彼の顔を思い出すとこの場から今すぐにでも逃げたくなってしまう。
初めてという言葉に価値は無いと思っていたのに。
それでも最初の相手が彼でないことがこんなに悲しいとは思わなかった。
「私も、弱いなぁ……」
そう言って、三郎はぎゅと拳を握りしめた。
な、長い…、そして捏造だけが垂れ流しに成っていく…!!
三郎の髪がサラストって言うのはナンか、そんな風な噂を聞いて「良し!」と思ってやった次第です。
あと、もう母親の話とかホント捏造まみれです。
信じないで下さい(汗)
あ、この後の話は経久×三郎のエロ…が入るので。
その、そういうのダメって方は戻って頂けると有り難く思います。
が、頑張ってそこだけ切り取る形に出来ればいいのですが…。
出来る…か?(汗)
テンプレート製作者:オペラ 高橋