シソーラス、僕の想いを代弁してよ
**現パロですが、うちの設定と少し違います。三郎と雷蔵が同じ学校に通ってます。でも双子、三郎が弟で雷蔵が兄です。
僕の代わりにこの想いを君に伝えてよ。
最近は太陽が沈むのも遅くなって、夕方だというのに光はまだ白いままだ。
気がつけば、僕たちの制服も長袖から半袖に変わっている。
図書室に差し込む光の中で、三郎は今日も本を読んでいる。
彼の定位置は窓際の個人用の机で、そこはカウンターからよく見えた。
今、図書室には僕たちしかいない。
委員会の僕を待ってくれるのは三郎の日課だけど、こんな風にこの広い図書室に二人きりと言うのは珍しかった。
僕たちは本当によく似ていると言われるけれど、でもこうやってみるとやっぱり別人なのだ。
三郎の横顔は何処か儚げで、僕とは違う。
それを僕は綺麗だと心から思う。
それをカウンターからぼんやりと見つめるのだ。
伏し目がちな目が時折瞬いて、そしてページがめくられていく。
しんと静まり返った図書室でその音だけがリアルに響くのだ。
「三郎、何を読んでるの?」
沈黙を破る様にそう問いかけると、彼はちらと僕の方を見た。
綺麗な茶色の眼が僕をとらえて、にこりと笑って手招きをした。
それに応えるように僕は立ち上がって、彼の隣へと座った。
「シソーラスだよ。さっき持ち出し禁止の棚で見つけた」
「…あぁ、貸し出し禁止のやつね。で、シソーラスって何?」
そう聞き返すと、三郎はん?とゆるく首をかしげた。
そして、あぁと言いながら彼はまたページをめくる。
「分類辞書?とか言う奴だよ。たとえば、家族って言葉があればそこから親、兄弟とか言う風に分類してあるんだ」
なかなか面白いよ、と続けられて僕は三郎にもう少しだけ近づいて中を見つめた。
項目は「感情」の部分で、いろいろと書いてある。
感情を表す言葉の分類らしい、へぇと小さくつぶやきながらもう一度三郎へと視線を向けた。
「面白い?」
「なかなかね。普通の辞書とはやっぱり書き方が違うから。なかなか興味深い」
そう言って三郎はまたページをめくる。
感情というページを見ている三郎はどこか冷めたようにそれを見つめていた。
面白いと言っていたのに、どうしたのかとじっと見つめればふと彼は小さくため息をついた。
「こんな風に…言葉でまとめられるほど感情は単純じゃないと私は思うんだけどなぁ」
そう言って彼はそっと愛情という文字をなぞる。
あぁ、そうだね、と僕はそれを唇だけで紡いで、その文字をなぞる三郎の指に自分のそれを重ねる。
ひんやりとした彼の指先はやっぱり僕とは違うのだと思う。
もし全部同じならば、冷たいとか暖かいとは感じないんじゃないかと思うんだ。
「愛情にも色々あると言いたいのだろうけど、なぁ雷蔵。私が君に向けるものは……ここにあるどの言葉で表せるって言うんだろうなぁ」
なぁ、兄さん。
そう言って三郎の視線と僕の視線が絡み合う。
音が消える、目の前の僕と同じだけど違う顔で視界が埋め尽くされる。
「……僕が知るわけないでしょう?」
そう言うと、三郎はちょっと寂しそうに笑って、僕の指に自分の指をからめた。
あぁ、僕の想いだってきっと、ここにある言葉のどれにだって当てはまったりはしないのだ。
ならば、言葉なんかで伝えなければいいんだ。
そっと目を細めれば、三郎は瞼を下ろす。
そのまま触れた唇はやっぱり少しだけ冷たかった。
(でもね、言葉で伝えたいのも本当なんだ……君では役不足かもしれないけれど)
end
僕の代わりにこの想いを君に伝えてよ。
最近は太陽が沈むのも遅くなって、夕方だというのに光はまだ白いままだ。
気がつけば、僕たちの制服も長袖から半袖に変わっている。
図書室に差し込む光の中で、三郎は今日も本を読んでいる。
彼の定位置は窓際の個人用の机で、そこはカウンターからよく見えた。
今、図書室には僕たちしかいない。
委員会の僕を待ってくれるのは三郎の日課だけど、こんな風にこの広い図書室に二人きりと言うのは珍しかった。
僕たちは本当によく似ていると言われるけれど、でもこうやってみるとやっぱり別人なのだ。
三郎の横顔は何処か儚げで、僕とは違う。
それを僕は綺麗だと心から思う。
それをカウンターからぼんやりと見つめるのだ。
伏し目がちな目が時折瞬いて、そしてページがめくられていく。
しんと静まり返った図書室でその音だけがリアルに響くのだ。
「三郎、何を読んでるの?」
沈黙を破る様にそう問いかけると、彼はちらと僕の方を見た。
綺麗な茶色の眼が僕をとらえて、にこりと笑って手招きをした。
それに応えるように僕は立ち上がって、彼の隣へと座った。
「シソーラスだよ。さっき持ち出し禁止の棚で見つけた」
「…あぁ、貸し出し禁止のやつね。で、シソーラスって何?」
そう聞き返すと、三郎はん?とゆるく首をかしげた。
そして、あぁと言いながら彼はまたページをめくる。
「分類辞書?とか言う奴だよ。たとえば、家族って言葉があればそこから親、兄弟とか言う風に分類してあるんだ」
なかなか面白いよ、と続けられて僕は三郎にもう少しだけ近づいて中を見つめた。
項目は「感情」の部分で、いろいろと書いてある。
感情を表す言葉の分類らしい、へぇと小さくつぶやきながらもう一度三郎へと視線を向けた。
「面白い?」
「なかなかね。普通の辞書とはやっぱり書き方が違うから。なかなか興味深い」
そう言って三郎はまたページをめくる。
感情というページを見ている三郎はどこか冷めたようにそれを見つめていた。
面白いと言っていたのに、どうしたのかとじっと見つめればふと彼は小さくため息をついた。
「こんな風に…言葉でまとめられるほど感情は単純じゃないと私は思うんだけどなぁ」
そう言って彼はそっと愛情という文字をなぞる。
あぁ、そうだね、と僕はそれを唇だけで紡いで、その文字をなぞる三郎の指に自分のそれを重ねる。
ひんやりとした彼の指先はやっぱり僕とは違うのだと思う。
もし全部同じならば、冷たいとか暖かいとは感じないんじゃないかと思うんだ。
「愛情にも色々あると言いたいのだろうけど、なぁ雷蔵。私が君に向けるものは……ここにあるどの言葉で表せるって言うんだろうなぁ」
なぁ、兄さん。
そう言って三郎の視線と僕の視線が絡み合う。
音が消える、目の前の僕と同じだけど違う顔で視界が埋め尽くされる。
「……僕が知るわけないでしょう?」
そう言うと、三郎はちょっと寂しそうに笑って、僕の指に自分の指をからめた。
あぁ、僕の想いだってきっと、ここにある言葉のどれにだって当てはまったりはしないのだ。
ならば、言葉なんかで伝えなければいいんだ。
そっと目を細めれば、三郎は瞼を下ろす。
そのまま触れた唇はやっぱり少しだけ冷たかった。
(でもね、言葉で伝えたいのも本当なんだ……君では役不足かもしれないけれど)
end
後書き
近親相姦第二段、です。苦手な方は本当にすいません;;
シソーラスっていうのは分類辞書らしいですね、私は読んだことないので、感情って項目があるのかってのは捏造です(おい)なのでスルーでお願いします。
実は最初雷→鉢で書き始めたのに気がついたら両想いになっていた不思議。