余白二日
三郎の机にぽつんと取り残されるように置かれていた帳面を見つけて、雷蔵は首をかしげた。
何だろう、と見覚えのないそれを手に取ってみる、帳面の下にはまた同じものが置いてあった。
同室というのは、色々と隠し事が出来ない状況ではあるが、これは今初めて見つけたものだった。
表紙には下の方に、五とだけ書かれている。
五…それは確かに自分たちの学年の数字だ。
五年生になってから既に三月は経っているし、同室になってからは更なる年月をともに過ごしている。
それなのにどうして今まで気付かなかったのかと、雷蔵は少しだけ自分の才能に疑問を覚えてしまう。
しかし、手にしたその帳面は彼の興味を引いてしまった。
中には何が書かれているのだろうかと、雷蔵はほんの少し罪悪感を感じながらもそれを一頁だけめくって見る。
「これ、日記?」
中に並べられた文字を見ればそれが、文頭に書かれた日付の出来事であるとすぐに理解できた。
この文字の主らしい、簡潔で分かりやすい内容だった。
ただ、中に書かれているのは事実だけで決して己の主観は入っていない。
ただただ、事実を並べたものだった。
それを見ながら雷蔵はアイツらしい、とだけ思う。
己の感情など微塵も見せない文章、もし自分がこうやって読んでいても「何してるんだ?」と聞くだけで、特に何も言わないのだろう。
それくらいに、事実だけが書いてあるのだ。
むしろ記録に近いそれを、ぱらぱらとめくっていく。
先まで書かれた日付は帳面の最後まで続いていた。
きちんと計算して日付をつけていたのだろう、最後は終業式で終わる様になっている。
それをおいて、もう一度机を見ればその下の帳面には六とあった。
もしかして来年分のも用意してあるのだろうかと、雷蔵はそれも手にした。
六と書かれた帳面も、先ほどの物と同じように日付だけが書かれていた。
きっとそれしか無いのだろうと解っていても、雷蔵の手は止まらない。
最後の方まで頁をめくっていけば、ふと何も書かれていないページを見つけた。
それは日付も三に入ったころで、不思議に思い雷蔵はその日付を確かめてみた。
前後には確かに日付があるが、しかしそこだけふと抜けている。
「ここは、確か…」
卒業式だ、と小さくつぶやいた。
毎年、忍術学園の卒業式は決まっている。
三月の中頃で、その日に六年生は長屋を引き払ってプロの世界に出ていくのだ。
その日とその次の日だけ日付が書かれていないのだ。
もしかして、と雷蔵はあの意地っ張りの同室者を思い浮かべた。
あれでいて寂しがり屋で、芯の弱いところがある彼はもしかすると、ここだけはその日を思い浮かべて日付を書けなかったのだろうかと、ふとそんなことを思い浮かべてしまった。
「何やってんだか」
そう呆れたような、だが、愛しさも含めた声で雷蔵はそんなことを呟いた。
ただ、部屋に帰ってきたら三郎を思い切り抱きしめたいなとそんなことを勝手に心に決めて、彼は日記を机に元のように戻したのだった。
end
何だろう、と見覚えのないそれを手に取ってみる、帳面の下にはまた同じものが置いてあった。
同室というのは、色々と隠し事が出来ない状況ではあるが、これは今初めて見つけたものだった。
表紙には下の方に、五とだけ書かれている。
五…それは確かに自分たちの学年の数字だ。
五年生になってから既に三月は経っているし、同室になってからは更なる年月をともに過ごしている。
それなのにどうして今まで気付かなかったのかと、雷蔵は少しだけ自分の才能に疑問を覚えてしまう。
しかし、手にしたその帳面は彼の興味を引いてしまった。
中には何が書かれているのだろうかと、雷蔵はほんの少し罪悪感を感じながらもそれを一頁だけめくって見る。
「これ、日記?」
中に並べられた文字を見ればそれが、文頭に書かれた日付の出来事であるとすぐに理解できた。
この文字の主らしい、簡潔で分かりやすい内容だった。
ただ、中に書かれているのは事実だけで決して己の主観は入っていない。
ただただ、事実を並べたものだった。
それを見ながら雷蔵はアイツらしい、とだけ思う。
己の感情など微塵も見せない文章、もし自分がこうやって読んでいても「何してるんだ?」と聞くだけで、特に何も言わないのだろう。
それくらいに、事実だけが書いてあるのだ。
むしろ記録に近いそれを、ぱらぱらとめくっていく。
先まで書かれた日付は帳面の最後まで続いていた。
きちんと計算して日付をつけていたのだろう、最後は終業式で終わる様になっている。
それをおいて、もう一度机を見ればその下の帳面には六とあった。
もしかして来年分のも用意してあるのだろうかと、雷蔵はそれも手にした。
六と書かれた帳面も、先ほどの物と同じように日付だけが書かれていた。
きっとそれしか無いのだろうと解っていても、雷蔵の手は止まらない。
最後の方まで頁をめくっていけば、ふと何も書かれていないページを見つけた。
それは日付も三に入ったころで、不思議に思い雷蔵はその日付を確かめてみた。
前後には確かに日付があるが、しかしそこだけふと抜けている。
「ここは、確か…」
卒業式だ、と小さくつぶやいた。
毎年、忍術学園の卒業式は決まっている。
三月の中頃で、その日に六年生は長屋を引き払ってプロの世界に出ていくのだ。
その日とその次の日だけ日付が書かれていないのだ。
もしかして、と雷蔵はあの意地っ張りの同室者を思い浮かべた。
あれでいて寂しがり屋で、芯の弱いところがある彼はもしかすると、ここだけはその日を思い浮かべて日付を書けなかったのだろうかと、ふとそんなことを思い浮かべてしまった。
「何やってんだか」
そう呆れたような、だが、愛しさも含めた声で雷蔵はそんなことを呟いた。
ただ、部屋に帰ってきたら三郎を思い切り抱きしめたいなとそんなことを勝手に心に決めて、彼は日記を机に元のように戻したのだった。
end
後書き
雷鉢っていうより、雷→鉢かもしれないですね;;
もし鉢屋が日記をつけてても、何となく感想的なことは何も書かないんじゃないかなぁと。事実しか書いてない感じだと思ってます。
んで、卒業式云々に関しては一番最初に泣くのは竹谷で、三郎は全部終わってちょっとだけ泣くの希望。人前で泣くのは恥ずかしいとか思ってそうです。
にしても三郎がどこにもおらん;;