あったかい笑顔
「喜八郎、寒くないの?」
と、そう尋ねられて私はじっと自分の格好を見直した。
別に、何処も寒くないのだけどと思って首を横に振ると、タカ丸さんは泣きそうな顔で「そんなわけないよぅ」と言い始めたのだ。
そんな事言われても、私は別に平気なのだけどと制服、マフラー、カーディガンの自分を見つめる。
「俺なんか、コート着て手袋して、耳宛てもしてるのに寒いんだよ。そんな格好の喜八郎が寒くないなんて、間違ってるよ」
うはぁ、と小さくタカ丸さんが溜息を吐いた。
「後、カイロも欲しい位なのに。流石にそこまですると2月くらいに凍死しそうだからしないけど」
「まぁ、まだ寒くなりますからねぇ」
12月の空を見上げると、まだ大分明るい物が続いている方だと思う。
去年なんか、もっと寒かったと思うけれど。
暖冬かぁ、と小さく呟くと「それでも寒いよ」と呟かれた。
寒い寒いと呟くタカ丸さんに思わず溜息を吐きながら、帰り道を進む。
寒いと感じるのは体温が低いせいだから、運動をしたり何かを食べたりして体温を上げれば大分緩和されるはずなのだけど。
ふと顔を上げると、近くの屋台で鯛焼きを売っているのが目に入った。
ちらとタカ丸さんを見やると、彼は既によそ見をしている。 本屋の所で足を止めているから今の内と私は鯛焼き屋の方に足を向けた。
一個100円、それを2つ買って本屋の前に戻ると、タカ丸さんは何か欲しい物でも有るらしくじっと店内を見つめている。
何だろぅと思ってその視線を追いかけると、どうやら最近出たというヘアメイクの写真集だった。
本当にこの人は好きだなぁと思いつつ、くいとその袖を引く。
「あれぇ?喜八郎、何処行ってたの?気が付いたら居なかったからびっくりしたよ」
「それはタカ丸さんがよそ見をしていたのが悪い。それよりも、…これを買いに行ってました。どうぞ…」
「鯛…焼き?」
あれ?嫌いだったのか?
と、流石に私も首を傾げてしまった。
甘い物は、好きだって言ってたと思ったんだけど、とちょっと不安になったけど、結局それは直ぐに解消されてしまった。
「そっか、これ…。何か、凄い嬉しいなぁ。俺今ちょっと感動しちゃった」
「感動?」
「うん。だって喜八郎途中から話し聞いてなかったからさ。何か、それでも気にしてくれたんだって、思って」
嬉しかったから、そう言ってタカ丸さんがにっこりと笑う。
あ、と思った。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
有難う、と言ったタカ丸さんのこの顔が有れば、私は実は冬もこのまま乗り切れるかもと思ってしまった。
(それくらい貴方の笑顔は温かかったのだ)
end
って事で綾タカです。 この二人は延々といちゃついて居ればいいと思っているのですが。
多分現時点でこの二人はくっついてる感じがぷんぷんしますね(笑)