あの人のことばかり目で追う

タコつぼの中はとても落ち着く。湿っぽくて薄暗くて、それはまるで母親の胎内にいたころを思い出させてくれる気がするのだ。
そして、そこからそっと地上を覗く。日の光に照らされたそこは眩しすぎるのもあるけれど、私はそこから見る景色が好きだった。足元だけを見るわけではなく、そこから見る景色は何処か新鮮で色々な事が見えてくる。下から見上げれば意外と、人の表情は解るものだった。
だが、私の視線は今常に一人だけをとらえている。ひょっこりと頭を覗かせれば、そこにな同じ学年の金色の髪が見えた。太陽に照らされるその色は眩しくて、その光に同化していきそうだった。それに目を細めて、私は目を凝らす。
彼は何時も何かを観察するように動いていて、それがとても興味深かった。時折、彼は私の作ったタコつぼに堕ちているし、下手をすれば七松先輩の塹壕にも落ちている。同じくらいの確率で保健委員も落ちているが、そちらはどうでも良かった。
私は穴からはい出て、先ほどタカ丸さんが落ちたタコつぼを覗き込む。
「タカ丸さん、大丈夫ですか?」
そう声を書ければ彼は「いたたた、あ、喜八郎、大丈夫だよ」と言いながら体を起して、這い上がろうとする。私はその手を取って、穴の外まで引っ張り出すのだ。
「…でも、最近よく喜八郎に助けられてる気がする」
と、嬉しそうにタカ丸さんが言った。そりゃあ、これは私が掘った穴なわけで、そして私は何時もタカ丸さんを見ているのだから。そして、こうやって彼を助けてお礼を言われるのが嬉しいからだ。
「何でわかっちゃうのかなぁ?俺がここに堕ちたってこと」
そう嬉しそうに彼は言うから。私は少しだけ意地悪というか、不意打ちをしてみたくなった。
「何時も、見ていますから」
「へ?」
「いいえ?」
そう素知らぬ顔をすれば、私の後ろで少しだけ顔を赤らめて、タカ丸さんが不思議そうな声を上げていた。

end

綾部のは最早観察だとおもわry…。