桜とうたたね

桜が咲くのは丁度卒業式の頃だ。6年になって、卒業して学園を出て行く。一体いく度目を迎えるのか、学園の庭に咲く桜はそうやって卒業生を送り出してきたのだろう。去年は、中在家先輩達、そして今年は僕達を送り出していく。
今年の卒業式も満開の桜の元に決行出来ると、学園長が嬉しげながらも少しだけさびしげに語っていたそうだ。僕と三郎は、どういうわけだが同じ城に就職が決まった。というよりも、さも当然の様に就職活動も一緒にしたからなんだけれど。卒業式は厳かというよりも何時も通りに終わってしまった。この日だけ特別というのも何だか気恥ずかしかったから、嬉しいと言えば嬉しい。
兵助達は委員会の後輩たちの所へ行くと言っていたし、僕も少しだけ顔を出した。中在家先輩の時は餞別を渡したり、下級生たちが泣いたりしていた。僕の時も同じように彼らは泣いてくれて、餞別の品をくれた。思わずもらい泣きすれば、泣かないでくださいと一年生の子に言われてしまう。
そんなこんなで後輩達と涙の別れを済ませて、僕は桜の老木の下に立っていた。まるで、卒業を祝福するかのような咲き方に僕はまた涙が出てきそうになる。ふと根元を見れば、そこに見慣れた茶色が覗いていた。そして、そう、ここは三郎の絶好の昼寝場所だった。ふわふわと揺れる花弁が彼に降り注いで、何処かはかなげだった。
「三郎、起きなよ」
と、声をかければゆっくりとその瞼が開く。
「雷蔵、別れは済んだのか?」
「うん。三郎は?学級委員長委員会の所に顔を出さなくていいの?」
「良いよ、私は全て昨日済ませてきた。卒業式と言ってもその日までは私達は学級委員だからそちらの仕事があったからさ」
そう言って、三郎は眠たげな目を擦って起き上がる。
「ここで昼寝をするのも最後だから」
あぁ、この桜との別れを惜しんでいたのかと、その表情で理解した。三郎は切なそうに桜を見上げて、そして「行こうか」と言った。それに僕も肯いて、二人して歩き出す。
今日で僕らはここを出て行くのだ。

end

桜と三郎って言う組み合わせも実は大好きです。椿と三郎とか、つか赤系の花が似合いすぎると思うんです。