おそろいのティーカップ

クリスマスのプレゼントだったと思う。
それを買ってきたのは三郎で、恥ずかしそうに俺に押し付けて、その後家に帰ってしまった。最初は怒らせるような事をしたのかと思っていたが、そうじゃなかった。
赤と緑の、如何にもクリスマスという感じの包装紙を破ればそこから出てきたのはペアのティーカップだった。緑と水色のカップが箱から出てきた時はびっくりしたものだが結局、それは今でも使っている。いや、正確には使っていた、になってしまった。
俺は今、大いなるピンチに陥っていた。
それは偶然、本当に偶然の事故だった。洗い物の最中、泡で手が滑って、俺の―緑の方のカップを割ってしまったのだ。幸いと言うべきか、その時三郎はいなかったのだが。俺はその割れたカップを炬燵のテーブルの上に置いて見つめるしか出来ない。
「どう、しよう…」
と、声に出してしまえば更に絶望感が増した。三郎が買ってきたのだから多分それなりに値が張るかもしれない。物の値段など、正直言って俺はどうでもいいし、おまけに安くて実用的な物の方が好きだったりする。でも三郎は意外とそのあたりを気にする節があるわけで。
「…やっぱり同じの買ってきた方が良い、よな」
「もう、それ売ってないぞ?」
「へぇ売ってない…ってさぶろおおお?!」
後ろから聞こえてきた声に、俺は思わず大きな声を出してしまった。そこには、今一番来てもらっては困る人物―三郎が呆れた様な顔をして立っていた。
「な、何で…、家…?」
「そりゃ合鍵使ったからな」
当たり前だろ?と言われる。はい、そうですね、合鍵渡したの俺ですね。と、肯いたが三郎は完全に無視でカップに視線を移している。ふ、と小さく息をつけばこいつは床に置いていた新聞紙を盗りだした。
なにをする気だと思っていれば、彼はそれに包んで「え?あれ?さぶろーさん?」とか言ってる俺を無視して三郎はそれを燃えないゴミの箱へと入れてしまった。
「三郎、怒んないのか?」
思わず声を上げようとしたが、余りの素早い動きにそれも出来ずに俺の口から出てきたのはそんな言葉だった。それに三郎は「は?」と首をかしげている。
「…割れたもんは仕方がないだろう?それにペアのカップなんてまた買いに行けば良いんだからな」
「でも、これはお前に買ってもらったわけだし…」
そう、女々しく言えば三郎はちっと軽く舌打ちしてきた。ごめんなさい、と心の中で謝ってしまう、なんか声に出したらもっと怒られそうだった。
「ならさ、一緒に買いに行こーぜ?今度は、俺が金出すからさ」
そう提案すれば三郎は、ん、と短く肯いていた。

ned

三郎は意外と物に対して拘りはあるけど、執着はなさそうだなと思ってます。逆に竹谷は拘りないけど、執着がありありそう。物が壊れるとすっごい凹みそうです。