4. こだわり愛情トッピング(綾タカ:現パロ)

バレンタインという行事はなかなか面白いと思う。
女の子たちはそのたびにきゃあきゃあと騒いで、楽しそうに悩んでいる。
とはいえ、今回は僕にも関係がないわけじゃない。
喜八郎が―僕の好きな人が、欲しいなどと言うからいけない。
そうだ、これは別に僕が渡したいわけじゃなくて、単に喜八郎に強請られただけなんだ。
と、誰にしているのかよくわからないけど言い訳しながらテンパリングなんてやっている。
綺麗に溶けたチョコレートを指で一掬いして口に運ぶ。
甘いチョコレートの味を舌に感じて、僕は思わず目を細める。
これなら、喜八郎を呼んでも問題ない。
「きはちろー、もうこっち来ても良いよー」
そうリビングの方に声をかけると、既にそこまで来ていたらしい彼がひょこっと顔をのぞかせた。
グレイの癖毛がぱさりと顔にかかって、彼の眼が嬉しそうに輝く。
元々表情の変化に乏しい彼だけれど、僕はそれが解るくらいになっていた。
それくらい一緒にいるってことなんだけど。
「チョコフォンデュですか?」
「うん、そう。……いきなりチョコが欲しいとかいうんだもん。これくらいじゃないと出来ないよ」
本当はもっと色々準備が要るけれど、簡易版でもきっと喜八郎は喜んでくれると踏んでいる。
だってはっきり言われたんだから。
「私のためと言うのが重要なんです」って。
それなら、と僕はここまでチョコをとかしたのだ。
買ってきた果物とか、チョコに合いそうな焼き菓子を並べて、簡易版チョコフォンデュの出来上がりだ。
近くにあったイチゴをフォークに刺して、チョコをつける。
「はい、あーん」
「あーん」
そう言って喜八郎はイチゴを口に運ぶ。
食べさせるこんな光景をクラスメイトにみられた時は「餌付け」なんて言われたけれど。
それでも、辞められないのは素っ気ない野良猫が振り向いてくれたみたいで、嬉しかったからだ。
喜八郎は気まぐれな猫みたいだから。
「タカ丸さん、こっち」
そう言われて、彼の顔が近付いてくる。
そのまま手も伸びてきて、僕の肩に回されて、唇が重なった。
「甘い…」
そう、呟くと喜八郎はふんわりと笑って「私からのチョコレートです」と言った。
「…気障だなぁ、喜八郎は」
そう言って笑うと「今度はタカ丸さんから欲しいです」と返された。
どうやってても僕はこの子には適わないのかなぁとか思いながら、近くにあったバナナをフォークに突き刺した。

END

ヴァレンタインにかこつけて。どっかから「あまぁーい!!」とか聞こえてきそうです。