3. 赤いリボンで結ばれてるの(久々鉢)

「運命の人は小指を赤い糸で結ばれているんだってね」
そう言ってタカ丸さんはふふと小さく笑って、赤い噛み痕のついた小指を見せた。
委員会の時に気がついて、指摘すると彼はそう言ってうれしそうに顔を赤らめたのだ。
それですぐにあぁなるほどと理解した。
犯人はもちろん、穴掘り小僧ただ一人だ。
元より嫉妬深いあの男のことだ、本当はもっと目立つことがしたいのだろうけど、流石にそれはタカ丸さんに悪いと思っているのだろう。
自分勝手ではあるが、気遣いもできるのだと思っている。
そんな話を聞いたせいだろうか、私はぼんやりと隣にいる男の小指ばかりを見てしまう。
三郎の手はきれいだ。
男の手だけれど、女に変装するためにごつごつしたものにならないようにと気を使っているのだという。
とはいえ、それにも限界があるのだと言っていた。
委員会が終わって、私は真っ直ぐに自分の部屋に行った。
雷蔵は私達の関係を知っているのもあるし、休日の前の日に三郎がここに来るのは習慣になっている。
他愛ない話をすることもあるし、こうやって今みたいにただ二人でいることもある。
勿論、触れ合うことだってあるわけで。
本を読んでいる三郎の手は真っ直ぐに伸びて、緑の表紙のそれを支えている。
すらりと伸びた白いそれをじっと見つめれていれば、その小指に赤い幻覚が見えそうになった。
それが私の小指につながっていればいいのになぁとも思う。
私は馬鹿みたいに彼に惚れているわけで、勿論三郎もそうだと自惚れていたい。
ひんやりとした床に寝そべって、そっと手を伸ばした。
それに流石に三郎も意識をこちらに移したのか、本をそっと膝へと置く。
「さっきから何だよ」
「運命の人とは、赤い糸で小指がつながっているらしいよ」
「は?」
「タカ丸さんが言ってたんだ」
ここにね、と言いながら三郎の手を取って私はその小指の付け根に口づける。
軽い触れるだけの口付を落とせば、三郎はくすぐったいと小さく笑った。
「糸ってまた、貧弱そうなもので結ばれてるんだな」
そう言って、三郎は小指の付け根に舌を這わせている私の頭を軽くはたいた。
離せと言っているような動きに私は少しだけ恨めしそうに見上げて、でも、手を放すことはしなかった。
「…貧弱って。浪漫があるとか思わないのか?」
「浪漫は知らんが、糸なんて細すぎてすぐにちぎれそうじゃないか。もっと丈夫なものの方が運命って感じがすると思うけど」
「…細くて、弱いから大事にするんじゃないのか?」
そう言うと、三郎は少しだけ眉を寄せた。
不満そう、と言うのが一番的確な表現かもしれない。
「…そんなに糸は嫌なのか」
そう問えば、三郎はきょとんとして私の方を見てくる。
なら、と言いながらとっていた手をぎゅと握った。
「もっと丈夫なものにすればいいよ。いっそ、紐ぐらいにしてしまえばいい」
それならば、簡単に切れたりしない、と。
「…お前、案外単純なんだな」
「お前が嫌だって言うからだろう」
と、返せばそうだな、と笑われてしまった。

君が嫌だと言うならば、いっそリボンくらいになれば良い。


end

上手くまとめられませんでした…orz
そもそも三郎は運命論者じゃなさそうだなと思ってみたり(え)