1. 甘い匂いに惑わされそう(伊食:現パロ)

ホワイトデーのお返しをねだれば留三郎は意外とあっさりと台所に立ってくれた。
僕が買っておいたクリーム色のエプロンを着て、買ってきてくれたらしいお菓子の材料をかき混ぜたりしている。
それをリビングから見ていれば、甘い匂いが漂ってきた。
砂糖と小麦粉と卵とチョコの焼ける、その香ばしい匂いに囲まれながら留さんはオーブンの中を見ていた。
「留さん、何作ってくれてるの?」
「ん?ガナッシュだけど?」
「…チョコの?」
「不満なのか?」
そう聞き返されれば別に、とだけ返しておく。
甘いものは好きだ。
特に、留さんが作ったのは格別だと思う。
僕よりも甘党の彼はやけに甘く作る、正直胸やけがすることもあるけど。
お菓子を作っている時の留さんを見ているのが好きなのだ。
とにかく美味しそうに、楽しそうに作るから、無茶を言って作ってもらう時だってある。
だから、僕の部屋にはお菓子作りの道具が必要以上にそろっているのだ。
台所まで行って留さんの隣に立てば「何だよ?」と尋ねられた。
「ん、僕もちょっと気になって」
「別に見てたって早く焼けるわけじゃないぞ」
「でも、面白いじゃないか。お菓子が焼ける時ってさ」
膨らんだり固まったり、色が変わったり。
面白いだろ、ともう一度紡げば留さんは「まぁな」と言って笑う。
「じゃあ、焼けるまで一緒に見てるか」
そう言って留さんはオーブンの前に座った、だから僕も隣に腰を下ろす。
甘い匂いがオーブンから漂ってきて、ふと隣を見れば楽しそうにそれを見ている留さんがいて。
(幸せだけど、なんだかなぁ…)
少しだけ誘惑された気分になって、僕は誤魔化すように首筋に手をあてた。

end

伊食で現パロです。もはや同棲状態の二人です。
うちの食満先輩の趣味はきっとお菓子作りとか、そんなんだ。