2 だからタバコは止めてっていったのに



三郎の家のリビングに上がって、最初に感じたのは煙いと言うことだった。
もわもわと白い靄が掛かるくらいに部屋には煙が充満している。
最初は小火か?!と思ってしまったけど、よく見れば灰皿に山と積まれた吸い殻がある。
三郎が煙草を吸うのは知っていたけど、どれだけ吸う気なのだろう。
しかもこの煙の量からすると、多分かなり重たい物だ。
更に良く見れば、違う銘柄の煙草の空き箱がゴミ箱にごっそりと入っている。
溜息を吐いて「三郎」と名前を呼べば、炬燵に入ってノートパソコンの画面を見ていた彼の顔が上がった。
「…レポート?」
「あぁ、雷蔵、来てたのか。うん、ちょっとね」
「煮詰まってる?」
そう聞き返すと三郎はいや、と首を横に振った。
「ちょっと数が多いから。それで…」
「それでこんなになるまで吸ったんだね」
呆れた、と続けると何が?と言うように漸く天井を見上げた。
「あぁ、煙…」
「小火かと思ったよ」
「そんなヘマはしない」
そう言って、また一本煙草に火を点けようとするから、僕はそれを奪い取る。
煙草のせいでがさがさになっているらしい、三郎の唇を見てむっと眉間に皺を寄せれば、三郎の口角が上がった。
「雷蔵、」
名前を呼ばれて、目を上げれば軽い、触れるだけのキスをされる。
剥けかけている彼の唇の皮が擦れて、微かに痛かった。
「三郎、痛いよ」
「リップクリームでも塗れば良かった?」
「…その前に、煙草を止めるって選択肢はないのかい?」
そう尋ねると暫し悩んで「それはないなぁ」と彼はまた、煙草の箱に手を伸ばしていた。

end

本当は「苦い」と雷蔵に言わせても良かったのですが、もう慣れてそうだなぁと思ったので、こっちで。
そしてうちの三郎は高校くらいからずっと吸ってます。銘柄はマルボロ、ポールモール、時々ラークかキャビンで、全部重いの。…肺ガンとかなりそうだな、この子。