1 子供じみた飴玉の味が意外だった



ちゅ、と音を立てて唇が離れた。
目の前にいる同室の彼はきょとんとして、その切れ長の目から瞬きすら忘れていた。
「いさ…」
「ごめん、委員会あるの忘れてた」
と、僕は誤魔化すように立ちあがる。
唇を触れ合わせたのは、偶然でも何でもない。
ただ、そうしたいと思ったからそうしただけだ。
委員会があるなんて嘘だった。
今日の当番は数馬と左近で、僕は来なくても新野先生がいるから行かなくたって問題なんかない。
ただ、そこから逃げてしまったのだ。
留三郎と僕は6年間同室で、その間に僕から彼への感情が友愛から恋愛へと変わってしまったのだ。
そんな事、きっと彼は知らなかったのだろう。
ただ楽しそうに後輩との事を語るのだ。
富松が喜三太がしんべヱが平太が…と。
それが余りに悔しくて、それ以上言葉を紡ぐなと、嫉妬に駆られて唇を合わせてしまった。
唇に舌を這わせると、甘い飴玉の味が残っている。
きっと留三郎が食べていたのだろう、それが少し意外だった。
「留さん、何時からこんなにお菓子食べるようになったんだろう…」
それはきっと僕の知らない一面が増えた証拠。
だから、かも知れない。
舌に感じる甘さがやけに切なく思えて、僕は水を飲んで洗ってしまいたくなって、井戸の方へと足を向けた。

end
後輩に嫉妬してキスしちゃう伊作でした。
うちの食満先輩は後輩が大好きなので、気が付くとずーっと話してます、その時だけKYになりがち(笑) そのせいで、伊作は面白くないんだけど、食満先輩はどんどんエスカレートしちゃったって感じですね。