低体温動物
だから僕の体温を上げる。
「暖かい」
そう言って、三郎は兵助の手を取って頬にあてた。
ひんやりとした空気の中で、二人で事後の余韻に浸っていればふと手を掴まれてそう言われた。
別に今夜はそんなに寒いはずはないと、兵助は友人にそっくりの三郎の顔を見る。
何処か切なげに閉じられた目やら、無表情に結ばれた唇はどういう訳か顔の持ち主である雷蔵とは似ていない。
彼は、決して兵助の前でこんな顔はしないのだ。
それは今、この表情を作り出しているのが不破雷蔵ではなくて鉢屋三郎だからなのだろうと、兵助は当たり前のことを思った。
ひたり、と自分の手を頬に当てる三郎は何を思っているのだろうとその手を滑らせればダメ、というように爪を立てられた。
軽く、痛くはない、くすぐったい位の力に兵助はふと軽く笑みを浮かべた。
掛け布団はすでに薄手のものに変わるくらいの気温になっている。
部屋の中だから夜気もほとんど感じない。
そのはずなのに、やけに三郎の周りだけが涼しい気がした。
肌にまとわりつく空気がそうなのではない、ただ自分の体温を暖かいという彼がそう感じているように見えたのだ。
そっと手を滑らせて耳のあたりを通して、後ろ頭へとそれをまわした。
あ、今度は爪を立てられないと少しだけ安堵すれば、頭に回した手を勢いよく引いて、三郎の頭を自分の胸の上に押し付けた。
裸のそれに鬘の髪の毛は材質のせいなのかくすぐったい。
「兵助、何だ急に」
「それはちょっと前の私の科白だったんだけど…」
「…私はここまで強引なことはしてない」
そうだろう?と聞き返されて兵助は「まぁ、そうだけど」と返した。
ぱちりと、一度だけ瞬きをして兵助は、そっと胸の上に置いた頭をなでた。
下に、項に、背中の方へとそれをなでるように滑らせれば「くすぐったい」と言われた。
声は笑っているのに、どうして今の三郎の顔は笑っていないと思ってしまったのだろうかと、自分の思考が少しだけ不思議だった。
だが、きっと自分の思考は当たっているという確信だけはあった。
ふ、と視線をずらして胸に埋めている三郎の顔を見る。
全部は埋めきれないのか、のぞいた目と視線があった。
茶色の、素の表情でいるときの鋭い眼と視線が克ち合う。
「…三郎、寒い?」
そう尋ねると、ふとその視線が下がってこくりと小さくうなずくのが分かった。
「…寒い、よ、兵助」
ぽつり、とこぼされた言葉がやけに切なく心細く響いて、兵助は「そっか」と言いながら背中にやっていた手を頬に滑らせる。
「寒い、…さっきまでは、暑かったのに、冷えてしまった」
「私は、まだ暖かいよ」
そう返事をすれば「ズルイ」と言いながら三郎が体を起こして、兵助をまたぐように体をずらした。
心地よい、肌同士が触れ合う感覚と重みに兵助は眼を細める。
頬に滑らせた手は三郎が握って、頬にあるままで。
それに切なげに口づけをされて、兵助の体にまた熱がこもるのが分かった。
「…私が、暖めてあげようか」
「助平」
「どっちが」
そう言って喉の奥で笑えば、黙れというように唇を重ねられた。
あぁ、お前だって十分暖かいよ、と言ってあげたかったけれど唇がふさがっていればそんなこと出来るはずもなく、この口づけが終わったら自分も「暖かい」と言おうと、兵助は心に決めた。
(寒いなら僕が暖めてあげる)
end
雰囲気重視が当サイトですけど、今回は重視し過ぎたとちょっと反省です。まぁ、何で相手が兵助かって言うと、フィーリングなんですけどね!(何)
久々鉢だと二人とも体温低そうだなぁとか思うんですけど。竹谷はきっと体温高い、雷蔵は平均くらいかなぁと思いつつ。でもやっぱり一番体温低いのは三郎だと思います。
「暖かい」
そう言って、三郎は兵助の手を取って頬にあてた。
ひんやりとした空気の中で、二人で事後の余韻に浸っていればふと手を掴まれてそう言われた。
別に今夜はそんなに寒いはずはないと、兵助は友人にそっくりの三郎の顔を見る。
何処か切なげに閉じられた目やら、無表情に結ばれた唇はどういう訳か顔の持ち主である雷蔵とは似ていない。
彼は、決して兵助の前でこんな顔はしないのだ。
それは今、この表情を作り出しているのが不破雷蔵ではなくて鉢屋三郎だからなのだろうと、兵助は当たり前のことを思った。
ひたり、と自分の手を頬に当てる三郎は何を思っているのだろうとその手を滑らせればダメ、というように爪を立てられた。
軽く、痛くはない、くすぐったい位の力に兵助はふと軽く笑みを浮かべた。
掛け布団はすでに薄手のものに変わるくらいの気温になっている。
部屋の中だから夜気もほとんど感じない。
そのはずなのに、やけに三郎の周りだけが涼しい気がした。
肌にまとわりつく空気がそうなのではない、ただ自分の体温を暖かいという彼がそう感じているように見えたのだ。
そっと手を滑らせて耳のあたりを通して、後ろ頭へとそれをまわした。
あ、今度は爪を立てられないと少しだけ安堵すれば、頭に回した手を勢いよく引いて、三郎の頭を自分の胸の上に押し付けた。
裸のそれに鬘の髪の毛は材質のせいなのかくすぐったい。
「兵助、何だ急に」
「それはちょっと前の私の科白だったんだけど…」
「…私はここまで強引なことはしてない」
そうだろう?と聞き返されて兵助は「まぁ、そうだけど」と返した。
ぱちりと、一度だけ瞬きをして兵助は、そっと胸の上に置いた頭をなでた。
下に、項に、背中の方へとそれをなでるように滑らせれば「くすぐったい」と言われた。
声は笑っているのに、どうして今の三郎の顔は笑っていないと思ってしまったのだろうかと、自分の思考が少しだけ不思議だった。
だが、きっと自分の思考は当たっているという確信だけはあった。
ふ、と視線をずらして胸に埋めている三郎の顔を見る。
全部は埋めきれないのか、のぞいた目と視線があった。
茶色の、素の表情でいるときの鋭い眼と視線が克ち合う。
「…三郎、寒い?」
そう尋ねると、ふとその視線が下がってこくりと小さくうなずくのが分かった。
「…寒い、よ、兵助」
ぽつり、とこぼされた言葉がやけに切なく心細く響いて、兵助は「そっか」と言いながら背中にやっていた手を頬に滑らせる。
「寒い、…さっきまでは、暑かったのに、冷えてしまった」
「私は、まだ暖かいよ」
そう返事をすれば「ズルイ」と言いながら三郎が体を起こして、兵助をまたぐように体をずらした。
心地よい、肌同士が触れ合う感覚と重みに兵助は眼を細める。
頬に滑らせた手は三郎が握って、頬にあるままで。
それに切なげに口づけをされて、兵助の体にまた熱がこもるのが分かった。
「…私が、暖めてあげようか」
「助平」
「どっちが」
そう言って喉の奥で笑えば、黙れというように唇を重ねられた。
あぁ、お前だって十分暖かいよ、と言ってあげたかったけれど唇がふさがっていればそんなこと出来るはずもなく、この口づけが終わったら自分も「暖かい」と言おうと、兵助は心に決めた。
(寒いなら僕が暖めてあげる)
end
後書き
いきなり事後とかすいませっ;;雰囲気重視が当サイトですけど、今回は重視し過ぎたとちょっと反省です。まぁ、何で相手が兵助かって言うと、フィーリングなんですけどね!(何)
久々鉢だと二人とも体温低そうだなぁとか思うんですけど。竹谷はきっと体温高い、雷蔵は平均くらいかなぁと思いつつ。でもやっぱり一番体温低いのは三郎だと思います。