今のバケツ、魚が入ってたんだけど?
ばしゃ、という水をひっくり返した音が響いて目を覚ました。
ついでに盛大に何かが転ぶ音…。
何かと言うよりは人だが、大方犯人は分かっているから私は溜息を吐いて、起きあがった。
外では、何とか廊下にはい上がろうとする影が見える。
火を灯して、それを照らし出すとやっぱり見覚えのある輪郭だった。
「伊作…大丈夫か?」
欠伸混じりに聞きながら障子を開けると、膝を突いて項垂れている伊作がいる。
不運はいつもの事なんだからそこまで凹むこともないというのに。
地面を見ると、黒い染みが地面に出来ていて、そこで何かが跳ねているように見えた。
「伊作…?」
もう一度声を掛けると、伊作は盛大に溜息を吐きながら私を見上げてくる。
「魚が…入ってたんだ」
「魚?」
言われて、もう一度、水を零したらしい所を見たけれど、何かが跳ねているだけで、魚には見えない。
ミジンコか何かの間違いじゃないのか、と思うけれど伊作はまた小さく「魚が…」と零した。
「稚魚だったんだよ…。保健委員みんなで、魚を育てようかって話で盛り上がってね。金魚鉢を新野先生が持っているから、それで飼おうって。でも、ダメになってしまった…」
あぁ、ナルホドと、私はまた地面をみた。
そこにはもう何かが跳ねている気配などない。
ただ、黒い染みが広がっているだけだ。
「……誰か別の人に頼めば良かった。幾ら不運って言っても…保健委員なのに、こうやって何かを殺してしまって」
やってしまった、と鬱々と呟く伊作を見ながら私が溜息を吐きたくなった。
別に態とやったわけでもないだろうに。
それでも、こんなに落ち込むのは、こいつが命という物に対して重きを置きすぎだからなのだろう。
それは小さい頃から知っていたし、この6年間で嫌と言うほど思い知らされていた。
戦場に行くたびに、任務で何処かに行くたびに。
こいつの行動は解っているから、もう何を言う気もないけれど。
ぽんと、伊作のふわふわの茶色の髪に手を置くと、ちょっと驚いたような視線を向けられる。
「…明日の朝一でここに墓を作ればいいだろ?出るときに踏むかも知れねーから、床下に近くなるけど…無いより、マシだろ?」
そう言うと、伊作は「そうだね」と言って、私の手をそっと取った。
「留さん、ありがとう」
「解ったら、もう寝るぞ」
ほら、と伊作を立ちあがらせるために私は取られた手をぐっと引いた。
end
伊食というよりは伊+食。
この後、伊作は留さんに思い切り甘えればいいと思います。
べたべたと膝枕して貰ったりとか、頭撫でて貰えばいい。
ついでに盛大に何かが転ぶ音…。
何かと言うよりは人だが、大方犯人は分かっているから私は溜息を吐いて、起きあがった。
外では、何とか廊下にはい上がろうとする影が見える。
火を灯して、それを照らし出すとやっぱり見覚えのある輪郭だった。
「伊作…大丈夫か?」
欠伸混じりに聞きながら障子を開けると、膝を突いて項垂れている伊作がいる。
不運はいつもの事なんだからそこまで凹むこともないというのに。
地面を見ると、黒い染みが地面に出来ていて、そこで何かが跳ねているように見えた。
「伊作…?」
もう一度声を掛けると、伊作は盛大に溜息を吐きながら私を見上げてくる。
「魚が…入ってたんだ」
「魚?」
言われて、もう一度、水を零したらしい所を見たけれど、何かが跳ねているだけで、魚には見えない。
ミジンコか何かの間違いじゃないのか、と思うけれど伊作はまた小さく「魚が…」と零した。
「稚魚だったんだよ…。保健委員みんなで、魚を育てようかって話で盛り上がってね。金魚鉢を新野先生が持っているから、それで飼おうって。でも、ダメになってしまった…」
あぁ、ナルホドと、私はまた地面をみた。
そこにはもう何かが跳ねている気配などない。
ただ、黒い染みが広がっているだけだ。
「……誰か別の人に頼めば良かった。幾ら不運って言っても…保健委員なのに、こうやって何かを殺してしまって」
やってしまった、と鬱々と呟く伊作を見ながら私が溜息を吐きたくなった。
別に態とやったわけでもないだろうに。
それでも、こんなに落ち込むのは、こいつが命という物に対して重きを置きすぎだからなのだろう。
それは小さい頃から知っていたし、この6年間で嫌と言うほど思い知らされていた。
戦場に行くたびに、任務で何処かに行くたびに。
こいつの行動は解っているから、もう何を言う気もないけれど。
ぽんと、伊作のふわふわの茶色の髪に手を置くと、ちょっと驚いたような視線を向けられる。
「…明日の朝一でここに墓を作ればいいだろ?出るときに踏むかも知れねーから、床下に近くなるけど…無いより、マシだろ?」
そう言うと、伊作は「そうだね」と言って、私の手をそっと取った。
「留さん、ありがとう」
「解ったら、もう寝るぞ」
ほら、と伊作を立ちあがらせるために私は取られた手をぐっと引いた。
end
伊食というよりは伊+食。
この後、伊作は留さんに思い切り甘えればいいと思います。
べたべたと膝枕して貰ったりとか、頭撫でて貰えばいい。