零れでる想い。
「タカ丸さん、好きです」
そう言って綾部がタカ丸の背中に抱きついている。
元々、今日ここにタカ丸を呼んだのは勉強を彼に教えるためだったのではないかと滝夜叉丸はため息をついた。
当のタカ丸はと言えば綾部の方を振り返って瞬きをしている程度だった。
ぽかんと言うよりは、ちょっと驚いたという程度なのだ。
じぃと自分を見つめてくる綾部ににこりと微笑めばタカ丸は「僕も好きだよ」と返事をした。
「あと、滝夜叉丸も好きだよ」
と、続けてきたので話を振られた彼はびっくりして口をあけてしまった。
その返事に綾部は不満そうに眉を寄せて、軽く頬を膨らませた。
それを見て、タカ丸は「え?どうしたの?喜八郎?」と不思議そうにしているばかりだった。
(…気の毒に)
と、思ったのは滝夜叉丸の方だ。
おそらく綾部はそう言う意味で気持ちを伝えたのに、タカ丸の方はそうはとらなかったのだ。
不満そうにしたまま綾部はぎゅうとタカ丸に抱きついた。
それに「きはちろー?」と間抜けに名前を呼んでいるタカ丸というのを見ながら滝夜叉丸は「今日はここまでに」と言うことしか思いつかなかった。
火薬委員の活動場所は主に硝煙蔵だった。
そこに置いてある火薬の在庫の管理が主なので、委員会となればそこで夕方まで拘束される。
今日も今日とて、委員会関係で呼び出されているタカ丸は一年生の伊助と一緒に在庫を数えていた。
二人一組で、顧問の土井から割り振られた火薬を数えていく。
別の棚には久々知と三郎次の姿もある。
土井の方は何時もの通り、は組の三人組の補習に行ってしまっていた。
暗い奥の方は夜目の利きやすい二人が担当することになっていて、タカ丸と伊助は入口近くの棚をチェックしている。
その姿を扉の所から見ながら綾部はこくんと小さくうなずいた。
何かを決心したような表情を浮かべて、綾部は硝煙蔵の中に足を踏み入れた。
火薬を入れていた甕を数えているタカ丸の後ろにそっと回り込んでいく。
当のタカ丸と伊助は気づいていなかった。
「タカ丸さん」
その声と共に手を伸ばせば、ぎゅうとタカ丸に抱きついたのだ。
びっくりしたのは勿論、タカ丸と一緒にいた伊助だった。
「あ、綾部先輩?」
「喜八郎?」
驚いて瞬きを繰り返す二人を気にもせずに綾部はタカ丸を見上げて、じっとその顔を見つめた。
「タカ丸さん、好きです」
その端正な顔から発せられた言葉にタカ丸は更にきょとんとしてしまった。
「あ、ああああ、綾部先輩?!」
むしろ、最初に言葉を発したのは伊助の方だった。
顔を赤くして、慌てたように二人を交互に見ていることしか出来ていないのだ。
当のタカ丸は瞬きをしているばかりだ。
「…タカ丸さん?」
そう尋ねれば、タカ丸はにこりと笑みを浮かべて、ぽんと綾部の頭に手を置いた。
「もう、昨日も言ったよ、僕も喜八郎のこと好きだよって」
「え?」
そう言葉を挟んでしまったのは伊助の方だった。
綾部は頭を撫でられながら、きょとんとしている。
「でも、ごめんね、今僕委員会の途中なんだ」
だから、また後で、と続ければ綾部のその眼がゆらりと悲しそうに揺れる。
ね、ともう一度言葉をこぼせば綾部はこくりと頷いてするりとタカ丸から腕を放した。
それから踵を返せば、綾部は硝煙蔵を後にする。
伊助はそれを見送りながら、隣で手を振っているタカ丸を見つめてしまう。
良いのか、と聞こうと口を開きそうになったのと、彼が座り込んで顔を手で覆ったのは同時だった。
「た、タカ丸さん?どうしたんですか?」
そう声をかければタカ丸は「ごめん、何でもないんだ」と小さくつぶやいている。
顔が赤い、と伊助がすぐに解る位にタカ丸は赤面している。
それを言わないくらいには、伊助は大人だった。
「うん、もう、大丈夫だから」
と、言って立ち上がるタカ丸に「はい」と返事をして二人はまた、火薬の在庫確認に戻るのだった。
タカ丸が部屋に戻る頃には既に日は落ちていた。
からりと、部屋の障子を開ければ中には綾部が正座をして中で待っていた。
その様子を見ればタカ丸はぱちりと瞬きをしてしまった。
じぃと自分を見上げてくる姿を見れば、タカ丸は小さく笑みを浮かべてため息をついた。
「あれから、ずっと部屋で待ってたの?」
そう尋ねながら障子を閉めて、綾部の隣へと腰を下ろす。
それを視線で追いかけて、綾部は結局タカ丸の正面へと体を向けた。
「後で、とタカ丸さんが言いましたから」
だから、ここに居たのだと言うようにタカ丸を見つめれば、彼は照れたように顔を俯かせてしまった。
「タカ丸さん?」
その様子に綾部が不思議そうに声をかけて、顔を覗き込んだ。
「…だって、喜八郎があんなところで言うんだもん」
そう呟かれた言葉に綾部は眼を見開いた。
覗きこんだ顔は赤く染まっていたのだ。
「タカ丸さん?もしかして、照れてるんですか?」
そう尋ねればこくりと、ほんの少しだけタカ丸が頷くのが分かった。
それを見れば胸の奥にじわりと何かが広がる気がした。
暖かい、柔らかなそれに綾部は眼を細めて、そっとその腕をタカ丸へと回す。
「…人前で言われたら、僕だって恥ずかしいよ」
「でも、何時だって、チャンスが有ったら私は言いたいです。それに他の人にも知っておいて貰いたいですから」
だから言うのだと含ませればぎゅうとその袖を引かれてしまった。
あのね、と続けられる声に何ですかと首をかしげればうん、とタカ丸がまた小さくうなずいた。
「…僕が好きなのは喜八郎だけだから。そんなにしなくても、大丈夫だよ」
そう言われて、はいと綾部は頷く。
小さく耳元で「キスしてもいいですか?」と問えばこれまた小さく「言わなくても良いってば…」と返された。
それに満足そうに口元だけ笑って、そっとタカ丸に口づけた。
end
ってことで綾タカです。何か、必要以上に甘くなってしまった気がしますが(汗)
タカ丸は比較的態度に出さないというか、誤魔化せる子だと思ってます。綾部は表情に出ないだけで、我慢とかしているわけではないです、きっと。
それでは、リクの方本当にありがとうございました!
そう言って綾部がタカ丸の背中に抱きついている。
元々、今日ここにタカ丸を呼んだのは勉強を彼に教えるためだったのではないかと滝夜叉丸はため息をついた。
当のタカ丸はと言えば綾部の方を振り返って瞬きをしている程度だった。
ぽかんと言うよりは、ちょっと驚いたという程度なのだ。
じぃと自分を見つめてくる綾部ににこりと微笑めばタカ丸は「僕も好きだよ」と返事をした。
「あと、滝夜叉丸も好きだよ」
と、続けてきたので話を振られた彼はびっくりして口をあけてしまった。
その返事に綾部は不満そうに眉を寄せて、軽く頬を膨らませた。
それを見て、タカ丸は「え?どうしたの?喜八郎?」と不思議そうにしているばかりだった。
(…気の毒に)
と、思ったのは滝夜叉丸の方だ。
おそらく綾部はそう言う意味で気持ちを伝えたのに、タカ丸の方はそうはとらなかったのだ。
不満そうにしたまま綾部はぎゅうとタカ丸に抱きついた。
それに「きはちろー?」と間抜けに名前を呼んでいるタカ丸というのを見ながら滝夜叉丸は「今日はここまでに」と言うことしか思いつかなかった。
火薬委員の活動場所は主に硝煙蔵だった。
そこに置いてある火薬の在庫の管理が主なので、委員会となればそこで夕方まで拘束される。
今日も今日とて、委員会関係で呼び出されているタカ丸は一年生の伊助と一緒に在庫を数えていた。
二人一組で、顧問の土井から割り振られた火薬を数えていく。
別の棚には久々知と三郎次の姿もある。
土井の方は何時もの通り、は組の三人組の補習に行ってしまっていた。
暗い奥の方は夜目の利きやすい二人が担当することになっていて、タカ丸と伊助は入口近くの棚をチェックしている。
その姿を扉の所から見ながら綾部はこくんと小さくうなずいた。
何かを決心したような表情を浮かべて、綾部は硝煙蔵の中に足を踏み入れた。
火薬を入れていた甕を数えているタカ丸の後ろにそっと回り込んでいく。
当のタカ丸と伊助は気づいていなかった。
「タカ丸さん」
その声と共に手を伸ばせば、ぎゅうとタカ丸に抱きついたのだ。
びっくりしたのは勿論、タカ丸と一緒にいた伊助だった。
「あ、綾部先輩?」
「喜八郎?」
驚いて瞬きを繰り返す二人を気にもせずに綾部はタカ丸を見上げて、じっとその顔を見つめた。
「タカ丸さん、好きです」
その端正な顔から発せられた言葉にタカ丸は更にきょとんとしてしまった。
「あ、ああああ、綾部先輩?!」
むしろ、最初に言葉を発したのは伊助の方だった。
顔を赤くして、慌てたように二人を交互に見ていることしか出来ていないのだ。
当のタカ丸は瞬きをしているばかりだ。
「…タカ丸さん?」
そう尋ねれば、タカ丸はにこりと笑みを浮かべて、ぽんと綾部の頭に手を置いた。
「もう、昨日も言ったよ、僕も喜八郎のこと好きだよって」
「え?」
そう言葉を挟んでしまったのは伊助の方だった。
綾部は頭を撫でられながら、きょとんとしている。
「でも、ごめんね、今僕委員会の途中なんだ」
だから、また後で、と続ければ綾部のその眼がゆらりと悲しそうに揺れる。
ね、ともう一度言葉をこぼせば綾部はこくりと頷いてするりとタカ丸から腕を放した。
それから踵を返せば、綾部は硝煙蔵を後にする。
伊助はそれを見送りながら、隣で手を振っているタカ丸を見つめてしまう。
良いのか、と聞こうと口を開きそうになったのと、彼が座り込んで顔を手で覆ったのは同時だった。
「た、タカ丸さん?どうしたんですか?」
そう声をかければタカ丸は「ごめん、何でもないんだ」と小さくつぶやいている。
顔が赤い、と伊助がすぐに解る位にタカ丸は赤面している。
それを言わないくらいには、伊助は大人だった。
「うん、もう、大丈夫だから」
と、言って立ち上がるタカ丸に「はい」と返事をして二人はまた、火薬の在庫確認に戻るのだった。
タカ丸が部屋に戻る頃には既に日は落ちていた。
からりと、部屋の障子を開ければ中には綾部が正座をして中で待っていた。
その様子を見ればタカ丸はぱちりと瞬きをしてしまった。
じぃと自分を見上げてくる姿を見れば、タカ丸は小さく笑みを浮かべてため息をついた。
「あれから、ずっと部屋で待ってたの?」
そう尋ねながら障子を閉めて、綾部の隣へと腰を下ろす。
それを視線で追いかけて、綾部は結局タカ丸の正面へと体を向けた。
「後で、とタカ丸さんが言いましたから」
だから、ここに居たのだと言うようにタカ丸を見つめれば、彼は照れたように顔を俯かせてしまった。
「タカ丸さん?」
その様子に綾部が不思議そうに声をかけて、顔を覗き込んだ。
「…だって、喜八郎があんなところで言うんだもん」
そう呟かれた言葉に綾部は眼を見開いた。
覗きこんだ顔は赤く染まっていたのだ。
「タカ丸さん?もしかして、照れてるんですか?」
そう尋ねればこくりと、ほんの少しだけタカ丸が頷くのが分かった。
それを見れば胸の奥にじわりと何かが広がる気がした。
暖かい、柔らかなそれに綾部は眼を細めて、そっとその腕をタカ丸へと回す。
「…人前で言われたら、僕だって恥ずかしいよ」
「でも、何時だって、チャンスが有ったら私は言いたいです。それに他の人にも知っておいて貰いたいですから」
だから言うのだと含ませればぎゅうとその袖を引かれてしまった。
あのね、と続けられる声に何ですかと首をかしげればうん、とタカ丸がまた小さくうなずいた。
「…僕が好きなのは喜八郎だけだから。そんなにしなくても、大丈夫だよ」
そう言われて、はいと綾部は頷く。
小さく耳元で「キスしてもいいですか?」と問えばこれまた小さく「言わなくても良いってば…」と返された。
それに満足そうに口元だけ笑って、そっとタカ丸に口づけた。
end
ってことで綾タカです。何か、必要以上に甘くなってしまった気がしますが(汗)
タカ丸は比較的態度に出さないというか、誤魔化せる子だと思ってます。綾部は表情に出ないだけで、我慢とかしているわけではないです、きっと。
それでは、リクの方本当にありがとうございました!