この胸からすり抜けてしまえ
全部、全部…すり抜けて、伝わればいいのに。
今日一日最悪の気分になったのは、恐らく硝煙蔵なんかに行ったのが悪いのだ。
タカ丸さんに大きな用事が有ったわけではないけど、まだ委員会なのかと覗いたのがまずかった。
用はない…用はないけど、昨日立花先輩から貰った金平糖を食べたかったのだ。
だから、早く終わらないかと思ったのだけど。
ひょいと頭を覗かせた先に居たのは、久々知先輩とやたらと仲良く話をしているタカ丸さんだった。
くすくすと楽しげな笑い声を零して、何か喋っている。 驚かせようと思ったのもあって、気配を殺していったから、多少なりとも油断している久々知先輩も気が付いてなかったみたいで。
私が、じーっと見つめていても気づくそぶりはなかった。
タカ丸さんと私は一応なりとも恋仲と言うわけではないけど、その笑顔は私だけの物であって欲しいと思ってしまった。
花が綻ぶような…そんな例えをするとあの人は怒るだろうか、それとも照れるだろうか。
そんな笑顔を向けて貰えるのは自分だけで良いと思ってしまった。
ごろんと板張りへ寝ころんで、溜息を吐く。
金平糖は机の上に置いたままだ。
湿気てしまうだろうか、それとも溶けてしまうだろうか。
ぼんやりとそんな事を考えた。
もし金平糖が溶けるなら私のこの醜い思いも、一緒に溶け出してしまえばいい。
今の私は、タカ丸さんにさえ当たってしまう自信があった。
だから、滝夜叉丸が委員会でここに居ないのは幸運であり、同時に不運だ。
当たるところがないのだから。
「喜八郎?いるー?」
と、急に聞こえてきた明るい声に私は思いきり体を起こした。
タカ丸さんの声だ、と思ったときには「居ます」と返事をしていた。
条件反射というのは、怖いなぁと思ってしまう。
「入るよー」という言葉と供に障子が開けば、手に笹の包みを持っている。
「…どうしたんですか?私に何かご用でも?」
ぶっきらぼうになってしまっただろうか。
タカ丸さんは「んーっとねぇ」と、良いながら私の前に腰を下ろす。
「お饅頭を食堂のおばちゃんに貰ったからさ。一緒に食べようって思って」
「…私と、ですか?委員会とかに持っていけば良かったのに」
そう首を傾げながらタカ丸さんを見ると、「えー…」と笑いながら言葉を探しているようだった。
どうしてさっきまで仲良さそうにしていたのだから久々知先輩とか、委員会の一年や二年の子達と食べればいいじゃないか。
量だってそれに足りるだろう。
「…だって、喜八郎と食べたかったんだもん。一番仲が良いから、お菓子食べながら色々話だってしたいよ」
一番。
一番仲が良い。
ダメかなぁ?と、タカ丸さんは微かに眉を下げて、何かを隠すように頬を掻いている。
駄目なわけなど無いじゃないか、私にとってもタカ丸さんは一番なのだ。
仲が良いと、意味は違うけれど一番なのだから。
「…いえ、ダメじゃないです。私も金平糖を立花先輩から貰ったので。それも一緒に食べましょう」
そう言うとタカ丸さんは「やったぁ、俺、金平糖も好きだよ」と嬉しそうに笑ってくれた。
胸が、痛かった。
でも、確かにさっきまでの傷みとは違う、優しくて心地よいそれ。
この胸の痛みも、私の想いも、今、全部目の前のこの人に伝わればいいのに。
そうしたら、この人はどんな顔をしてくれるのだろうか。
それが笑顔であるなら、私は幸せで死ねるかも知れないけれど。
end
多分、こいつら両思いです。(何)
ちょっとぶっきらぼうになりつつも、でもタカ丸に絆されて、何時も通りに戻る綾部とか可愛いと思うんですよ。
思うンですけど、可愛く出来ているかは…解りません…orz
今日一日最悪の気分になったのは、恐らく硝煙蔵なんかに行ったのが悪いのだ。
タカ丸さんに大きな用事が有ったわけではないけど、まだ委員会なのかと覗いたのがまずかった。
用はない…用はないけど、昨日立花先輩から貰った金平糖を食べたかったのだ。
だから、早く終わらないかと思ったのだけど。
ひょいと頭を覗かせた先に居たのは、久々知先輩とやたらと仲良く話をしているタカ丸さんだった。
くすくすと楽しげな笑い声を零して、何か喋っている。 驚かせようと思ったのもあって、気配を殺していったから、多少なりとも油断している久々知先輩も気が付いてなかったみたいで。
私が、じーっと見つめていても気づくそぶりはなかった。
タカ丸さんと私は一応なりとも恋仲と言うわけではないけど、その笑顔は私だけの物であって欲しいと思ってしまった。
花が綻ぶような…そんな例えをするとあの人は怒るだろうか、それとも照れるだろうか。
そんな笑顔を向けて貰えるのは自分だけで良いと思ってしまった。
ごろんと板張りへ寝ころんで、溜息を吐く。
金平糖は机の上に置いたままだ。
湿気てしまうだろうか、それとも溶けてしまうだろうか。
ぼんやりとそんな事を考えた。
もし金平糖が溶けるなら私のこの醜い思いも、一緒に溶け出してしまえばいい。
今の私は、タカ丸さんにさえ当たってしまう自信があった。
だから、滝夜叉丸が委員会でここに居ないのは幸運であり、同時に不運だ。
当たるところがないのだから。
「喜八郎?いるー?」
と、急に聞こえてきた明るい声に私は思いきり体を起こした。
タカ丸さんの声だ、と思ったときには「居ます」と返事をしていた。
条件反射というのは、怖いなぁと思ってしまう。
「入るよー」という言葉と供に障子が開けば、手に笹の包みを持っている。
「…どうしたんですか?私に何かご用でも?」
ぶっきらぼうになってしまっただろうか。
タカ丸さんは「んーっとねぇ」と、良いながら私の前に腰を下ろす。
「お饅頭を食堂のおばちゃんに貰ったからさ。一緒に食べようって思って」
「…私と、ですか?委員会とかに持っていけば良かったのに」
そう首を傾げながらタカ丸さんを見ると、「えー…」と笑いながら言葉を探しているようだった。
どうしてさっきまで仲良さそうにしていたのだから久々知先輩とか、委員会の一年や二年の子達と食べればいいじゃないか。
量だってそれに足りるだろう。
「…だって、喜八郎と食べたかったんだもん。一番仲が良いから、お菓子食べながら色々話だってしたいよ」
一番。
一番仲が良い。
ダメかなぁ?と、タカ丸さんは微かに眉を下げて、何かを隠すように頬を掻いている。
駄目なわけなど無いじゃないか、私にとってもタカ丸さんは一番なのだ。
仲が良いと、意味は違うけれど一番なのだから。
「…いえ、ダメじゃないです。私も金平糖を立花先輩から貰ったので。それも一緒に食べましょう」
そう言うとタカ丸さんは「やったぁ、俺、金平糖も好きだよ」と嬉しそうに笑ってくれた。
胸が、痛かった。
でも、確かにさっきまでの傷みとは違う、優しくて心地よいそれ。
この胸の痛みも、私の想いも、今、全部目の前のこの人に伝わればいいのに。
そうしたら、この人はどんな顔をしてくれるのだろうか。
それが笑顔であるなら、私は幸せで死ねるかも知れないけれど。
end
多分、こいつら両思いです。(何)
ちょっとぶっきらぼうになりつつも、でもタカ丸に絆されて、何時も通りに戻る綾部とか可愛いと思うんですよ。
思うンですけど、可愛く出来ているかは…解りません…orz