両家懇親お食事会


結婚前に両親と顔合わせというのは、誰にとっても緊張するイベントである。
特に、今回は全員のとこで一人の花嫁に三人の花婿という異例のことだったために余計に気を使わねばというのが四人の見解であった。
雷蔵と三郎の両親の顔合わせは基は親戚同士だったので比較的和やかに進んだ。
昔から仲が良かったからねぇと言われてあっさり承諾されて、逆に二人が脱力したくらいだった。
三郎と兵助の両親の場合は豆腐の美味しい店に案内して、それでご機嫌をとりつつ、竹谷と三郎の場合は多少大声を出して騒げるような場所を選んだため、楽しく進んだのだった。
そして、今、全員を呼んだ形の食事会をしなければいけなくなっていたのだった。
全員で一緒に住むのだから、他の花婿の両親にも挨拶をと言ってくれてるどの親にもある意味感謝すべきなのかもしれない。
こんな突拍子もない結婚に同意してくれる親などそうそういないと全員が分かっているのだ。
だが、今回はどこでやろうと言うので、四人は頭を抱えていた。
全員が和やかにすごせるような場所は、と今は三郎の部屋で頭を抱えているのだ。
「計12人で入れて、尚且つみんなで楽しめる場所、だろう?」
「料亭とかは流石に取れないしね。結婚式の費用とか考えたら、あんまり無茶もできないし」
うぅん、と雷蔵が首をかしげてどうしたものかと呟いた。
彼の悩み癖はもう慣れていたが、今回ばかりはそれを責めることも無視することもできない。
全員が全員同じような状態なのだ。
「…フレンチレストランとか、言ってもなぁ。それは雷蔵の両親の時に行ったし」
「そうだね、料亭は兵助の時、個室で楽しめる焼肉屋がハチの時だっけ?」
「あぁ、うちの親ああいうの好きだったしさ。三郎のご両親も個室でゆっくりできるって喜んでくれたけど」
今回はなぁ、と竹谷も首をかしげた。
兵助も兵助であの料亭をもう一度というのは予算内では苦しいというのだ。
さて、と全員は広げたパンフレットを見下ろしていた。
全員でここはどうかという店が乗った雑誌やらパンフレットやらを持ち寄ったのだがこれというものが見当たらないのだ。
食事会で居酒屋というのも、何とも首をかしげてしまうし、かと言ってあまり高いところも予算が厳しい。
しかも両親もいい年だし、無茶が効くのかと言われれば怪しいところだった。
そこそこ騒げて、12人がきちんとおさまり、なおかつ低予算など難しい内容だった。
「全員顔合わせよりも、やっぱりまた二組ずつくらいがいいんじゃないか?それならゆっくり話もできるし」
「でも、もう間がないよ。言っても、父さんたちは仕事してるんだから休みも合わせずらいし」
「そうだな…私と兵助はまだしも、雷蔵とハチも仕事はあるし」
どうしたもんかなぁ、とため息が交差してしまった。
どうせなら今、年末前の何もない次期が一番良い。
十月という時期は全員の仕事柄休みが取りやすいらしいのだ。
「式も11月だしなぁ」
うぅん、とまた唸り声が混じり合って、四人はカレンダーを見つめた。
三郎の部屋の壁には一年分が書かれたカレンダーが貼られている。
壁に穴を開けないようにとそれは少々強めのテープで壁にはりつけられているのだ。
そこには結婚式の日取りや引っ越しの日程なんかも書き込まれている。
十月の終わりには全員今いる部屋を引き払って、新居に入ることになっていた。
それを見ながら、兵助が「あ」と小さく声をこぼしたのだ。
「何だよ、兵助。なんか思いついたのか?」
それを聞いていた竹谷がなぁなぁと彼の肩を揺さぶった。
「あ、いや、十月の終わりにはもう新居に行くわけだろう?」
「まぁな。式の後にはすぐに新婚旅行だし…」
「うん、だからさ。いっそ、ホームパーティでどうかと思って。それなら低予算で済むし、新居お披露目もできるだろう?幸い両隣りは知り合いなわけだしさ。ちょっと前日にでも断わりを入れておけば、たぶん多めに見てくれるし」
そこまで話を聞いて、三人は確かにと何度か頷いている。
話しながら兵助もあれ、良いんじゃないかと思い始めたらしいのだ。
「もう、そう!そうしよう!お店って固定するからいけなかったんだよ」
なぁんだ、と雷蔵がすっきりしたと言うように笑みを作る。
それに釣られるように三郎も確かになと言って笑いをこぼしていた。
竹谷も「さっすが兵助」と言いながらその長い髪をわしわしとなでていた。
「あぁ、これで悩みは一個解決だね」
はーっ、と雷蔵が息を吐いたのを聞いて竹谷が「一個?」と首をかしげた。
それに、違うの?と雷蔵が聞き返している。
「だって、ホームパーティするって言っても料理何を作るとかとか、お酒はありにするかとか、時間とか考えないとだめでしょ?まずは一つ解決じゃない」
そう言われて、三人はびしりと固まってしまった。
一つ、悩みが解決したけれど、それによってまた話し合うことが増えたのだと、そこでようやく気づいて、三人はそうだったとうなだれてしまったのだった。

結局細かい話をして、話し合いは朝まで続いた。
朝方、四人で雑魚寝をしながらぼんやりと今日が休みでよかったとその日、三郎の腕枕に選ばれた竹谷がこぼしたのだった。