5.仕上げはいつもベッドに運ばれて


家の玄関で、なんて別に経験したことがないわけではなかった。雷蔵や八左ヱ門に勘右衛門、勿論兵助にだって勢いのままがっつかれてと言うのは正直なところ何度もある。昔住んでいた個々人のアパート方がよほどスリルがあると言うものだ。しかも、一人との最中に踏み込まれたと言うのもある。だから、今更と言うのもあるのだが。だが、この家の玄関は初めてだった。五人で暮らし始めてから、五人の間での決まりはやけに厳しくなった気もする。契約書―というわけではないが、みんなで暮らす上での約束事は決めておくにこしたことはない。おまけに兵助は、三郎から見ればかなり真面目な部類だと思っていた。こういう決まりは破らないと。
玄関で下だけ脱がされて、散々に触られた。敷いてあるマットはもう自分たちの体液で染みだらけになっている。ぐち、と自分と兵助が繋がっている水音が人も物も少ない玄関に響いて、既に一度達した後だと言うのに三郎は微かに体を震わせた。
「…もうこれ、使い物にならないね」
そう言って、兵助は三郎が上半身を投げ出し、うつぶせになっているマットをぱたんと弄んだ。誰のせいだよ、とため息交じりに呟けば「私のせいだね」と悪びれもしない返事が返ってきた。
「私が新しいのを買ってくるよ、責任持って」
「というか、お前のせいでコートも駄目になったし、マフラーも汚れた。後で、靴も全部見て回らないといけないじゃないか」
これ、とマットの向こうに無造作に置かれた秋用のコートを見やった。お気に入りだったブラウンのそれには余り言いたくない形で染みが出来てしまっていた。最悪、ともう一度呟いて三郎はかくんと冷たい床に額をつけた。もうこれで満足のはずだろう、と腕に力を入れればぎゅと後ろから抱きしめられる。は?と思わず声を零せば、ちゅ、と肩口にすいつかれた。
「…な、もう一回」
そう、甘えるように言われれば三郎はげんなりしたように「シネ」と呟いた。
「私はおでんが食べたいんだが」
「ちゃんと作るって」
ちゅ、ちゅと耳元でリップ音がする。諦める気はないのか、ごそごそと手も脇腹辺りを這っていた。なんか、こういうのってセックスって言うより交尾だよなぁと三郎はぼんやりと考えた。兵助がこんな風に求めてくるのも珍しいと思う。淡泊というよりは貯めこんだものを一気に発散するタイプではあると思っていたけれど、兵助がこんな風にがっついてくるのは珍しい、気がする。というよりも、何時も飄々と言うか涼しげな彼がもう一回、だとか言いながら甘えてくるのが新鮮だった。悔しいくらいに整った顔をした兵助は三郎の目から見ても、美人という部類だ。ちらりと見ると、何時も通り余り瞬きをしない印象のあるしっかりとした目線が此方をとらえていた。ぎらり、という擬態語がよく似合う瞳、それが自分を見つめている。ぞくり、と背筋に何とも言えない感覚が走った。