子供の言うことには。
大川学園幼稚園の先生たちの恋愛事情はちょっと複雑です。
年長組の潮江先生は年中組の食満先生の事が大学時代から好きでした。
同じ幼児教育養成課程で出会ったのですが、初対面で大喧嘩をしてしまったのです。
些細な喧嘩だったのですが、それ以来二人は顔を合わせれば喧嘩をするような仲になってしまったのです。
内心、潮江先生は落ち込んでいました。
実は一目ぼれだったのです。
普段は感じない感情のせいで戸惑ってしまった先生はつい突っかかってしまい、食満先生も負けん気が強かったので応戦してしまったのでした。
そして四年間が過ぎ、気がつけば職場まで同じになっていたのでした。
元々大学自体が大川学園の付属だったのですが、就職までも付属の幼稚園だったのです。
しかも、同期生がこぞって同じところに就職したので、幼稚園の先生たちはみんな同級生なのでした。
そして、栄養士の善法寺先生と食満先生は幼馴染でした。
家が近所で幼稚園から就職先まで全部一緒です、といっても善法寺先生がストーカー並みの執念で同じところへ行っているのですが。
そんな訳で口癖が「彼女欲しい」の食満先生は、基本的に男性から想いを寄せられることが多いのでした。
「なぁ、小平太。どうしてもんじろーは私のぷろぽーずをうけてくれないんだろうか」
不満そうな顔をしながら仙蔵君は校庭のブランコをこいでいました。
女の子かと見間違うほど可愛らしい仙蔵君の好きな人は、担任の潮江先生でした。
彼の日課はその潮江先生にプロポーズすることでした。
毎日毎日、先生と二人きりになるたびに「結婚しよう」というのですが、潮江先生は「あーはいはい」と適当に返事をするだけだったのです。
最初は返事を貰えたのだと喜んでいたのですが、途中で気がついたのです。
「もんじろーは私のいうことを、子供のいうことだとあいてにしてくれないんだ」
腹が立つ、と仙蔵君は大きくブランコをこぎました。
それを隣のブランコから見ながら小平太君は中在家先生のことを思い出しました。
自分も最初はそうだったのですが、中在家先生は「大学生になったら」と約束してくれたのです。
それを考えると、少し仙蔵君が可哀相になりました。
でも、小平太君はすこし不思議だったのです。
自分が中在家先生のことが好きなのは、一緒にいて楽しいからでした。
でも、潮江先生はよく怒るし、小平太君はこの間ゲンコツまで貰ったのです。
勿論仙蔵君も同じくらい怒られたり、ゲンコツされたりしているのですが。
「仙蔵はどうしてもんじろーのことが好きなんだ?」
思わず小平太君はそう尋ねてしまいました。
その言葉に、ゆっくりと仙蔵君のブランコが止まります。
どうしてと聞かれて、仙蔵君は少し困ってしまいました。
実は理由なんて考えたことがなかったのです。
とにかく好きだと思うのですから、理由などぱっと出てくるわけなどないのです。
暫く考えて仙蔵君は「なら」と口を開きました。
「小平太はどうなのだ?ちょーじ先生のこと、どうして好きなのだ?」
そう聞き返されれば、小平太君は「うんとね」と言葉を切ってから満面の笑みで仙蔵君の方を見ました。
「私は、ちょーじのぜんぶが大好きなんだ!いっしょにいると楽しいし、あんしんするし。あと、いっぱいなでてくれるし、それから…」
と、続ける小平太君に仙蔵君もこっくりとうなずきました。
「なら私と同じだ。私ももんじろーのぜんぶが好きなんだ」
「いっしょだな!」
「そうだ」
そう言って二人はにっこり笑いました。
「だが、私がこんなにもんじろーのことをおもっているのに…どうして、もんじろーは私にふりむいてくれないのだろう?」
そういって仙蔵君はまたうつむいてしまいました。
その言葉に小平太君は今、職員室で何か書いているらしい潮江先生を見つめました。
何時もの無表情で、潮江先生は何か書いているのですが、時々顔をあげて正面にいる食満先生を見つめているのです。
もしかして、と小平太君は思いました。
(もんじろーってけま先生のことが好きなんじゃないのかな?)
そう言ってじっと見ていると、隣で仙蔵君も顔をあげていました。
そして、ぽつりと「そういうことか」とつぶやいたのです。
その言葉に、小平太君は仙蔵君の顔を見て、それからびくっと肩を揺らしたのです。
「もんじろー、けま先生の方ばかり見ている」
「え?せ、せんぞー?」
これには流石に小平太君も冷や汗をかきました。
こんな仙蔵君の顔など見たことがなかったからです。
ぎりりと仙蔵君は歯をかみしめて、ぎゅと拳を握りしめました。
それから、ぽんとブランコから飛び降りてそのまま真っ直ぐに職員室に向かって走り出したのです。
それを見て小平太君も慌てて追いかけました。
何をするのだろうという好奇心もありましたが、何よりこれから何が起こるのか怖かったからでした。
そんな小平太君の心配など余所に仙蔵君は真っ直ぐに職員室に向かい、勢いよく扉を開けたのでした。
驚いたのは二人の先生たちです(中在家先生は年少組でお昼寝をさせており、善法寺先生は別の部屋で次の給食の献立を考えていました)。
「仙蔵?どうした?お前、外で遊んでたんじゃないのか?」
びっくりしながらも潮江先生は仙蔵君にそう声をかけましたが仙蔵君はそんな先生を無視して食満先生の方へと向かって行ったのです。
職員室に入る時は「失礼します」と言わなければいけないのですが、そんなことすっかり忘れています。
「けま とめさぶろー!」
そう食満先生の名前を呼んでぴっと仙蔵君は先生を指さしました。
その様子に何が何だか解らない食満先生は潮江先生の方を見ます。
しかし、事態を把握しているわけもない潮江先生は慌てて首を横に振りました。
「おまえなんかに、もんじろーはわたさないからな!絶対、絶対、もんじろーは私のはなよめになるんだ!」
解ったか!とそう一気に言って、仙蔵君は大きく胸を張りました。
それを聞いて、潮江先生は顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を開けたり閉じたりしています。
食満先生はと言うと、ぽかーんとしたまま思わずうなずいてしまいました。
「それは…どうぞ」
と、思わず言ってしまった言葉に潮江先生は更にダメージを受けてしまいました。
「だから、これからいっさい、もんじろーをゆうわくするなよ、解ったな!」
そう言って仙蔵君は潮江先生の方へと向き直りました。
「これで、私との愛をじゃまするものはいなくなったぞもんじろー。私がほうりつをかえるまで、ちゃんと待ってるんだぞ」
その言葉を残して仙蔵君は満足そうに踵を返しました。
それから「小平太!次は、すべりだいで遊ぶぞ!」と言って小平太君と一緒に出て行きました。
職員室は嵐の後のように静まり返ってしまいました。
しんとなった部屋の中でぽかーんとしている二人は、そろそろと目を合わせました。
顔を赤くして「せ、仙蔵、何を…」と気が動転している潮江先生に食満先生は哀れみを込めた目を向けています。
そして……。
「お前も、大変だったんだな」
がんばれ、という言葉まで貰ってしまい、潮江先生はそのまま机に顔を伏せてしまいました。
それを見て、食満先生は「大丈夫か?」と見当はずれなことを言っています。
そんな職員室を余所に外では、仙蔵君と小平太君の楽しそうな声が聞こえていました。
年長組の潮江先生は年中組の食満先生の事が大学時代から好きでした。
同じ幼児教育養成課程で出会ったのですが、初対面で大喧嘩をしてしまったのです。
些細な喧嘩だったのですが、それ以来二人は顔を合わせれば喧嘩をするような仲になってしまったのです。
内心、潮江先生は落ち込んでいました。
実は一目ぼれだったのです。
普段は感じない感情のせいで戸惑ってしまった先生はつい突っかかってしまい、食満先生も負けん気が強かったので応戦してしまったのでした。
そして四年間が過ぎ、気がつけば職場まで同じになっていたのでした。
元々大学自体が大川学園の付属だったのですが、就職までも付属の幼稚園だったのです。
しかも、同期生がこぞって同じところに就職したので、幼稚園の先生たちはみんな同級生なのでした。
そして、栄養士の善法寺先生と食満先生は幼馴染でした。
家が近所で幼稚園から就職先まで全部一緒です、といっても善法寺先生がストーカー並みの執念で同じところへ行っているのですが。
そんな訳で口癖が「彼女欲しい」の食満先生は、基本的に男性から想いを寄せられることが多いのでした。
「なぁ、小平太。どうしてもんじろーは私のぷろぽーずをうけてくれないんだろうか」
不満そうな顔をしながら仙蔵君は校庭のブランコをこいでいました。
女の子かと見間違うほど可愛らしい仙蔵君の好きな人は、担任の潮江先生でした。
彼の日課はその潮江先生にプロポーズすることでした。
毎日毎日、先生と二人きりになるたびに「結婚しよう」というのですが、潮江先生は「あーはいはい」と適当に返事をするだけだったのです。
最初は返事を貰えたのだと喜んでいたのですが、途中で気がついたのです。
「もんじろーは私のいうことを、子供のいうことだとあいてにしてくれないんだ」
腹が立つ、と仙蔵君は大きくブランコをこぎました。
それを隣のブランコから見ながら小平太君は中在家先生のことを思い出しました。
自分も最初はそうだったのですが、中在家先生は「大学生になったら」と約束してくれたのです。
それを考えると、少し仙蔵君が可哀相になりました。
でも、小平太君はすこし不思議だったのです。
自分が中在家先生のことが好きなのは、一緒にいて楽しいからでした。
でも、潮江先生はよく怒るし、小平太君はこの間ゲンコツまで貰ったのです。
勿論仙蔵君も同じくらい怒られたり、ゲンコツされたりしているのですが。
「仙蔵はどうしてもんじろーのことが好きなんだ?」
思わず小平太君はそう尋ねてしまいました。
その言葉に、ゆっくりと仙蔵君のブランコが止まります。
どうしてと聞かれて、仙蔵君は少し困ってしまいました。
実は理由なんて考えたことがなかったのです。
とにかく好きだと思うのですから、理由などぱっと出てくるわけなどないのです。
暫く考えて仙蔵君は「なら」と口を開きました。
「小平太はどうなのだ?ちょーじ先生のこと、どうして好きなのだ?」
そう聞き返されれば、小平太君は「うんとね」と言葉を切ってから満面の笑みで仙蔵君の方を見ました。
「私は、ちょーじのぜんぶが大好きなんだ!いっしょにいると楽しいし、あんしんするし。あと、いっぱいなでてくれるし、それから…」
と、続ける小平太君に仙蔵君もこっくりとうなずきました。
「なら私と同じだ。私ももんじろーのぜんぶが好きなんだ」
「いっしょだな!」
「そうだ」
そう言って二人はにっこり笑いました。
「だが、私がこんなにもんじろーのことをおもっているのに…どうして、もんじろーは私にふりむいてくれないのだろう?」
そういって仙蔵君はまたうつむいてしまいました。
その言葉に小平太君は今、職員室で何か書いているらしい潮江先生を見つめました。
何時もの無表情で、潮江先生は何か書いているのですが、時々顔をあげて正面にいる食満先生を見つめているのです。
もしかして、と小平太君は思いました。
(もんじろーってけま先生のことが好きなんじゃないのかな?)
そう言ってじっと見ていると、隣で仙蔵君も顔をあげていました。
そして、ぽつりと「そういうことか」とつぶやいたのです。
その言葉に、小平太君は仙蔵君の顔を見て、それからびくっと肩を揺らしたのです。
「もんじろー、けま先生の方ばかり見ている」
「え?せ、せんぞー?」
これには流石に小平太君も冷や汗をかきました。
こんな仙蔵君の顔など見たことがなかったからです。
ぎりりと仙蔵君は歯をかみしめて、ぎゅと拳を握りしめました。
それから、ぽんとブランコから飛び降りてそのまま真っ直ぐに職員室に向かって走り出したのです。
それを見て小平太君も慌てて追いかけました。
何をするのだろうという好奇心もありましたが、何よりこれから何が起こるのか怖かったからでした。
そんな小平太君の心配など余所に仙蔵君は真っ直ぐに職員室に向かい、勢いよく扉を開けたのでした。
驚いたのは二人の先生たちです(中在家先生は年少組でお昼寝をさせており、善法寺先生は別の部屋で次の給食の献立を考えていました)。
「仙蔵?どうした?お前、外で遊んでたんじゃないのか?」
びっくりしながらも潮江先生は仙蔵君にそう声をかけましたが仙蔵君はそんな先生を無視して食満先生の方へと向かって行ったのです。
職員室に入る時は「失礼します」と言わなければいけないのですが、そんなことすっかり忘れています。
「けま とめさぶろー!」
そう食満先生の名前を呼んでぴっと仙蔵君は先生を指さしました。
その様子に何が何だか解らない食満先生は潮江先生の方を見ます。
しかし、事態を把握しているわけもない潮江先生は慌てて首を横に振りました。
「おまえなんかに、もんじろーはわたさないからな!絶対、絶対、もんじろーは私のはなよめになるんだ!」
解ったか!とそう一気に言って、仙蔵君は大きく胸を張りました。
それを聞いて、潮江先生は顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を開けたり閉じたりしています。
食満先生はと言うと、ぽかーんとしたまま思わずうなずいてしまいました。
「それは…どうぞ」
と、思わず言ってしまった言葉に潮江先生は更にダメージを受けてしまいました。
「だから、これからいっさい、もんじろーをゆうわくするなよ、解ったな!」
そう言って仙蔵君は潮江先生の方へと向き直りました。
「これで、私との愛をじゃまするものはいなくなったぞもんじろー。私がほうりつをかえるまで、ちゃんと待ってるんだぞ」
その言葉を残して仙蔵君は満足そうに踵を返しました。
それから「小平太!次は、すべりだいで遊ぶぞ!」と言って小平太君と一緒に出て行きました。
職員室は嵐の後のように静まり返ってしまいました。
しんとなった部屋の中でぽかーんとしている二人は、そろそろと目を合わせました。
顔を赤くして「せ、仙蔵、何を…」と気が動転している潮江先生に食満先生は哀れみを込めた目を向けています。
そして……。
「お前も、大変だったんだな」
がんばれ、という言葉まで貰ってしまい、潮江先生はそのまま机に顔を伏せてしまいました。
それを見て、食満先生は「大丈夫か?」と見当はずれなことを言っています。
そんな職員室を余所に外では、仙蔵君と小平太君の楽しそうな声が聞こえていました。
後書き
遅くなりましたが、リクの幼稚園パロです! 6年ということでしたが、長次と伊作を出せず…すいませっ(汗)
仙蔵君のライバル宣言になってしまいましたが、こんな感じでよろしかったでしょうか?ささめ様
それではリクの方ありがとうございました!これからも当サイトをよろしくお願いいたします。
仙蔵君のライバル宣言になってしまいましたが、こんな感じでよろしかったでしょうか?ささめ様
それではリクの方ありがとうございました!これからも当サイトをよろしくお願いいたします。