「デザート食べるよ、当然」

皿がどんどん積み重なっていく…。

4人で焼き肉に行こうとなったのは冬のある日だった。
兵助の誕生日に今度こそ食べ放題を!と言い出したのは竹谷で、小食な三郎とむしろ豆腐がとか言っていた兵助は「お前が行きたいだけだろ」と突っ込んだ。
それでもそれに雷蔵が「良いね、それ」と乗っかってしまったせいか、三郎が賛成しないわけはない。
そうなれば残るのは兵助だけで、賛成せざるを得なかったのだ。
全員で暖簾を潜ればなかなかしゃれた感じの店内が広がっていた。
予約をしていたのが良かったのか、座敷へと通されて、すぐに食べ放題を4人前注文する。
あまり高い肉が揃っているわけではないけれど、学生からすれば十分だった。
質より量、大学生なんてみなそんなものだ。
盛り合わせが来てから、すぐにこっからここまでと注文をしたのは雷蔵だった。
大雑把な性格だからなのか、それよりも普通に食べたいからなのか、小食組二人はぽかんとしてしまう。
炭火焼の上で焼かれていくそれを見ながら、三郎は開始20分ですぐに戦線を離脱して、焼く側へと回っていた。
トングでひっくり返すそばからその肉は全部正面の二人―雷蔵と竹谷の腹の中へと消えていく。
時間は1時間半、ちらりと卓の下に置かれた皿を見て少しばかり身震いしたくなった。
ドンドン注文して、焼いて減らしてを繰り返していれば、忘れていたけれど、店員が回収するのも間に合わないくらいに皿が積み重なっているのだ。
脂っこいものが苦手な三郎としてはそれだけでえづきそうになる。
「二人とも、よくこれだけ入るな…」
そうあきれるように言えば、二人はきょとんと首をかしげてしまった。
「え?まだ7分目くらいだけど?」
「そうそう。もうちょい頑張れるぜ」
なぁ、と竹谷が雷蔵に同意を求めればうんと彼はうなずいたのだ。
それを見ながら、兵助もうわぁというように顔をひきつらせた。
兵助もどちらかといえばあっさりした物が好みで、だいぶん箸も遅くなっていたのっだ。
ひくり、と口の端がひきつれば当の二人の方が怪訝そうな顔をしていた。
「俺たちからすれば、何でそんなに入らないのかわかんねーよ」
「そうだよねぇ。これくらい軽くいけるとおもってたんだけど…」
不思議と言われて、兵助と三郎は二人して、うなだれてしまったのだ。
それでも時間がもったいないと二人はまた箸を動かし始めた。
皿はどんどん積み重なっていく。
基なんてとっくにとっていそうだった。
最後の皿を三郎が手にして焼き始めれば、あ、と兵助が声をこぼした。
そろそろ食べ放題終了の時間なのだ。
「そろそろデザート決めないと。確か一品サービスだろう?」
そう言われれば、三郎がそうだったなと言って微かに胃を押さえた、アイスクリームの一つくらいなら入るかなと首をかしげれば肉を全部網の上において、兵助が広げているデザートメニューを見つめる。
あっさりした物がいいと、二人は結局オーソドックスにバニラアイスへとその食指を伸ばした。
「二人はどうする?肉あれだけ食べたんだからデザートは…」
入るのか、と聞こうとしてすぐにその言葉は途切れた。
二人が指さしているのは、この店でもかなり大きい部類に入るフルーツパフェだったのだ。
「これ良くない?チョコもあるらしいけどさ」
「あー…俺フルーツの方がいいや。チョコって甘ったるすぎて苦手だし」
「そっか、じゃあ僕がチョコレートパフェで、ハチがフルーツパフェだね」
その言葉を聞きながら、兵助と三郎はまたもや顔を見合わせた。
大食漢にデザートの質問など、はっきり言って愚問だったかもしれない。
ぽかんとしている二人を見て、雷蔵が「あ、呼び鈴押すね」と言って店員を呼びだしていた。
何だろう、バニラアイスさえ入らない気がしてきて、二人は少しだけ遠い眼をして店員が来るのを待ったのだった。

end

後書き

焼肉屋の5年生です。
椛月のイメージは竹谷、雷蔵=いっぱい食べる、三郎=小食、兵助=脂っこいと小食あっさりはいっぱいって感じです。皿が積み重なるのは本当に起こるので、食べ放題は危険だなぁと思いつつ。