長い髪一本からはじまる懸念
仲直りしようというよりは、真偽を確かめに来たという方が正しい。
けんか別れをした日から結局、一度も連絡を取っていなかった。
殆ど衝動的に飛び出したようなものだし、会いずらかったというのが一番だけど。
それでも鍵を返したわけではなかったから、三郎のアパートの鍵はずっと持っていたのだ。
それを返すつもりはまだなかった。
インターフォンを押せば、中から彼が出てきて、少しだけ気まずそうな顔をしながらも部屋に入れてくれた。
ワンルームだから入ってすぐにベッドがあって、そこに座るのが定番になっている。
挨拶を交わして、必要最低限の会話しかしない。
それ以上に出来ることがないというのもあるけど。
三郎が紅茶を淹れる背中を見ながら、ベッドに手を滑らせる。
僕以外の他人の荷物はなくて、別にずっと一緒にいるわけではないんだと、浮気相手のことを考えた。
す、とそのシーツに手を滑らせると、一本長い髪の毛が指に引っかかる。
女の子?と思ったけれど、それほど細いわけではない。
むしろ、癖が強くて何処かで見た感じの長さだ。
もしかして、僕の知ってる相手かもしれない。
それをじっと見つめていれば、はっ、と一人行き着いた人物がいた。
兵助。
と、唇だけでその名前を紡ぐ。
あぁ、もしかして…彼が、ここで三郎と寝たのかもしれないとふと思い当った。
もともと、ハチと兵助と、四人で仲が良くて、僕と三郎が付き合い始めたっていうかんじだった。
ハチは本当にノーマルだし、兵助はどっちでもとか言っていたと思いだして僕はそれをジャケットのポケットに入れて携帯を取り出す。
兵助のメールアドレスを見つければ、どうしようか少しだけ考えた。
たぶん、この後はどうするのか三郎と話をしないといけない。
でも、それなら兵助だって呼ばないと。
じゃないと僕の気が治まらないじゃないか。
今から三郎の部屋に来てというメールを打って、すぐに携帯をポケットにしまった。
くしゃりと、自分の前髪をつかむ。
悔しいのと悲しいのと、それから裏切られた気持ちと、全部が混じってぐらぐらと煮詰まる感じがする。
「雷蔵、お茶入ったよ」
そう言って持ってきてくれるマグを受け取りながら、浮気相手が誰なのか、どうやって切り出そうか少しだけ迷った。
end
何でこの話はこんなに続くのだろうか?(ええっ)最初突発だったんですが、なんか続けられそうと思って続けたのがまずかったようです(汗)たぶん、雷鉢で終わると…信じております。