他人の匂いの残る部屋
現パロで雷鉢、今回は他人というか、そっくりな親戚設定です。で、ちょっと修羅場ちっくなので、苦手な方はご注意を。
僕以外の人の匂いがする。
久しぶりに三郎の部屋に入って思ったのはそれだった。
最近、全く彼の家に遊びに来ていなかったのは僕がいけないのだけど、不思議なことに付けないはずの香水の匂いがそこにしみついている。
甘い、花のような匂いに気がつけば、三郎は不思議そうに首をかしげている。
「どうしたんだ、雷蔵?怖い顔してる」
そう言って、伸ばしてきた手を僕は思わずそれを払い落してしまった。
なんだ、何だこれは。
ショックを受けたような顔をして今にも泣きそうな眼を向けてくるけれど、それはこっちの方だと思ってしまう。
泣きたいのは僕の方だ。
確かに最近は忙しくてほとんど顔を見せられなかったけれど。
あぁ、でも誤解かもしれない。
だけど、どうしてこんな匂いがベッドにつくというんだろう?
「…ねぇ、三郎、香水付けるようになったの?」
「いや、私、そういうのは苦手だから付けないけど」
「じゃあ、どうして、ベッドから香水の匂いがするの?」
そう聞き返すと、はっとしたような顔で彼はベッドを見た。
しまった、と言いたげな顔を見て僕は唇をかんだ。
何でそんな顔をするんだ。
もし、何もないならもっと不思議そうな顔をするはずだろう?
おかしいって言うはずだろう?
「…ねぇ、どうして?」
もう一度たずねると、それは…と言葉を濁らせた。
「誰かここに入れたってことでしょう?」
「そ、れは…」
「僕以外の誰かがこのベッドに入ったってことだよね?」
違うの?と聞き返せば、ぐっと言葉に詰まったように三郎は唇をかんだ。
「そう、分かった…」
そう言って、扉の方へ行こうとすれば三郎は「待って」と腕を伸ばしてくる。
それが僕の腕にたどり着く前にさっと振り払えば、目を見開いて、それからふいと視線を下へと向けた。
「…そうだよね、悪いのは僕だ。忙しいって言ってあんまり三郎にかまってあげてなかったし。さびしくなるのもしょうがないよね」
「違う!そうじゃない、って…」
「違うの?じゃあ、どうして香水の匂いがするの?僕が納得するように説明してよ」
そう言うと、ほら、やっぱり言葉に詰まった。
無理だというように視線を下げて、「すまない…」とだけ呟いている。
そう、と一言僕は呟いて、その部屋を出た。
外に出れば、寒くて身を切るような風が吹いている。
鉄の扉に背を預けてずるずると座り込んだ。
見上げた先の月がやけに奇麗で、逆に腹が立った。
「暫く、鏡も見れないなぁ…」
そんなつぶやきは、空しく空気に溶けた。
end
喧嘩する雷鉢です。うん、たぶん三郎は浮気したんじゃないかと…(汗)事情があって、しばらく恋人に構ってなかったらかっさらわれたって感じですが、きっと色々三郎にも事情があると思うのです。そこまでかければいいんですけど。こういう修羅場も書いてて楽しいのは本当です。