喜びのため息

嬉しくて嬉しくて零れてしまうのはため息ばかり。

うふふ、という楽しげな笑い声を立てながら三郎はごろごろと床を転がっている。
それを見ながら兵助と竹谷は怪訝そうな顔をした。
休日、それも明日には彼の誕生日という日だっだのだが、朝からずっとこの調子だった。
何かを思い出したように笑みを浮かべて、それからふふと笑いをこぼす。
正直言って、気味が悪い。
休日にこうやって集まって時間を過ごすというのはよくやるのだが、それにしても始終この調子では怪しすぎる。
何があったのか、聞けばそれは解消されるのだろうが、なんとなく聞きたくなかった。
大方、雷蔵がらみの惚気を延々と聞かされ続けることになるのだろう。
三郎は雷蔵と付き合っている。
それは仲間内では当然のことになっている。
互いに互いのことを惚気合うものだから、二人の日常なんて兵助も竹谷も知り尽くしているようなものだった。
はぁー…と今度は笑ったまま溜息をついて、そしてまた笑いをこぼす。
二人は視線を交わして、どうするかと無言の会話をした。
そして、竹谷がしょうがないと言うように三郎の方へと向き直った。
「三郎、さっきからお前何なんだよ。笑ったりため息ついたり。気持ち悪いぞ」
最後の一言は率直な言葉だった。
寝ころんでいた三郎は待ってました!というように勢いよく起き上がる。
「いやぁ、雷蔵がさぁ」
と、案の定というような話の始まりに、二人はため息をついた。
「なんだよ、まだ何も話してないじゃないか」
「いや、雷蔵って名前が出てきた時点で惚気だって解るからいいよ」
「じゃあ何で聞いてきたんだ」
そりゃぁ、ウザいからだよとは流石に言えなかった。
返事が返ってこなければ、三郎は不思議そうに首をかしげて、まぁ、良いかとつぶやいた。
「んで、雷蔵がな」
「ハチ、今日の夕飯は何かな?」
「さぁ…麻婆豆腐とかじゃないの?」
「だったら、私嬉しいんだけど」
「って、聞けよ、おまえら!」
ばん、と三郎の手が床を叩く音が響く。
それに二人は顔を見合せて、またため息をついた。
仕方ない、そんな色が顔前面に出ているだろう。
よし、と三郎がうなずいたのを合図に彼はぺらぺらと昨日何があったのかというのを話し始めたのだった。
「雷蔵が私の誕生日を覚えていてくれたんだ!」
「毎年祝ってもらってるじゃないか」
雷蔵が三郎の誕生日を祝うのは毎年のことだ、そして、逆、三郎が雷蔵の誕生日を祝うのもしかり。
毎年、二人して「プレゼントは何がいいかなぁ?」と二人のところに相談に来るのだった。
結局、二人の助言などほとんど参考にせずに全然違うものを買ってくるのだから馬鹿らしい行事の一つに数えたくなるほどだ。
「今年は違うんだ。外泊届をもらって、ちょっと足をのばして温泉にでも行こうと言ってくれたんだ。あーもうっ!雷蔵愛してるー!!」
へぇ、温泉ね…ラブラブでいいね、とは流石に続けなかったが。
「今年は本当に大胆だよな、雷蔵。昨日から楽しみで私、一睡もしていないんだ」
「寝ろよ。ってか、明日の朝まで起きてくるな。部屋に帰って寝ろよ」
「そうそう。明日寝不足で起きれなくて、いけなくなってもしらねーぞ」
「私は貫徹一週間までなら平気だ!」
あーそうですか、とため息交じりに返事をすれば、もはや二人の話など聞いていない三郎がまた深いため息をついた。
顔からにじみ出るのは幸せと喜びの色だ。
「あぁ、もう!私は本当に幸せ者だな」
そんな言葉を聞きながら二人は「そうですか…」とだけ返したのだった。

end

たとえこんな感じでも私は雷鉢であると言い張ります。ってか、云い張らせてくださいっ…!(汗)
私のほのぼの系の双忍の理想はバカップルです(真顔)