嘘に騙されてあげる
君の嘘に騙されてあげよう。
「私はお前が好きだよ」
そう言われて、伊作は微かに眉根を寄せた。
うそつき、と言いたくなったのは留三郎のその泣きそうな顔を見たせいだ。
本当は自分のことなど友達としか思っていないくせに。
それでも伊作が「好きだ」と言えば、彼はそう返事をしてくれる。
そして、何をしたって抵抗の一つもしやしないのだ。
彼の意中が誰であるかなど、伊作にはよくわかっている。
一体何時から自分が留三郎を見つめていたと思っているのだろう。
いつもいつも喧嘩しているくせに、留三郎の視線は文次郎のものだった。
何処かで見かけるたびに彼の視線はいつも文次郎を追っている。
そして、文次郎も同じだ。
いつもいつも、彼の視線も留三郎を追いかけている。
知らないのは当人ばかりだ。
それでも、と伊作は思う。
好きだと言って手を伸ばせば、留三郎をそれを拒まない。
さびしいから?それとも、文次郎の気を引きたいから?
聞いてみたい言葉ではあるけれど、伊作にその勇気はなかった。
腕の中にいる”恋人”はそれを驚いたように聞いて、すぐに目を伏せて「そんなわけないだろう?」というにきまっているのだ。
「留さん、僕は留さんが好きだよ。他の誰よりも、一番好きだ」
「…私もお前が好きだよ、伊作」
そう言って彼の腕は伊作の背中に回ってくる。
勇気がないのだ、そして自分は欲が深いのだ。
たとえ嘘でも、やっと手に入れたこの腕を振りほどくような真似は伊作にはできないのだ。
end
文食←伊です。もちろん、留さんは総受けですが。なんかお互いに誤解しまくって、三角関係に陥っている彼らが好きです。
でも、全員手をこまねいて関係が崩れない、と。六年は実はどろどろしているのが好きだったりします。