何をされても本気で憎めない

「少しくらい嫌いになってくれたって良いんだよ?」
そう言われて、留三郎は眼を見開いて伊作を見つめた。
寂しそうに視線を伏せて、伊作は留三郎の腕に包帯を巻いていた。
今回の怪我も共に実習に行って、伊作の不運に留三郎が巻き込まれておったものだ。
もちろん、伊作も怪我をしていたが、今回は留三郎の方が酷かった。
火傷しっかりとついてしまった腕を見て、伊作は最初泣いてしまった。
くっきりと残った火傷に軟膏を塗って、包帯を巻く。
一人でできるといっても、伊作は頑なに自分にやらせてくれと言った。
その手当の時に、ぽつりと溢されてしまったその言葉。
「一年生の頃から巻き込まれて…今回はこんな傷を残してしまって。それでも、僕は留さんが好きだけど、留さんは僕のことを嫌いになる権利があるよ…」
嫌われても当然なんだ、と続けたいのだろう。
それでもうまく言葉にできずに伊作の唇は、ぱくと微かに動いてすぐに閉じてしまうのだ。
それを見ながら、留三郎はため息をつくしかない。
嫌いになるなんて本当に今更だ。
一年生の頃から巻き込まれて、まる六年間ずっと一緒にいた上に、今では情まで交わしあう仲だというのに。
相変わらず馬鹿だなぁ、と思う。
泣きそう、という言葉がぴったりな目で伊作は、手当を全て終えて片づけをはじめていた。
それを見ながら、はは、と留三郎は笑いをこぼす。
あぁ、馬鹿だなぁ、こいつはと。
嫌いになどなれるわけないではないか。
自分を巻き込みながらも、彼は自分のことをこんなに考えてくれるのだ。
そんな男を誰が嫌えるというのだろう。
そっと手をのばして、頭巾を取っていた伊作の頭をわしわしとなでてやる。
「え、え?留さん?何、何なの?」
と、不思議そうな声を出すので「いや、お前が馬鹿すぎるからさ」と告げてやったのだった。

end

企画一発目は伊食伊です!最近こいつらもリバっぽくなってきてしまいましたが(汗)