日なたの屋上

秋と春は私の特等席だ。

暑いのも寒いのも苦手な三郎は暖かくなると必ずと言っていいほど長屋の屋根に登る。
夏の日差しでは瓦は熱過ぎて寝そべることはできない、冬は冷たすぎて同様だった。
昼寝には全くもって最適なのが春先と秋だった。
柔らかな日差しはちょうどよい風と温度をもたらしてくれるのだ。
その特等席に寝そべりながら三郎はゆっくりと流れる雲を見つめた。
遠くで雲雀が鳴いて、それに耳を澄ませながらそっと目を閉じた。
「あっれ?三郎、お前、ここで何やってんだ?」
そんな長閑な空気を破るようにして顔をのぞかせたのは竹谷だった。
手に持っているのは虫取り網でまた彼の委員会で一悶着あったことがうかがえる。
「んー…昼寝」
と、短く答えればはーっ、とため息をつかれた。
「呑気で、良いよなお前は」
そう言いながら竹谷も屋根の方へと上がってくる。
それを横目に見ながら、「委員会はいいのか?」と尋ねれば、あぁ、まぁ、と彼は屋根の下を見下ろした。
「毒虫は大方捕まえ終わったからな。後、2,3匹足りなくて。それでこっちにいないかって登ってきただけなんだけどさ」
「…残りは後輩に任せるって?」
そう聞き返せば「まぁ、そういうこと」と竹谷は肩をすくめながら笑いをこぼした。
「でも、良いなぁ、ここ。暖かいし、昼寝には丁度いいな」
「だろう?私の特等席だよ」
そう言って、ころんと寝返りを打てばかしゃりと瓦が鳴る。
じぃと、眠そうな顔を竹谷に向ければ、にこりと柔らかい笑みを向けられる。
別に昨日も会ったのだが、何故かこんな時間が懐かしく思えた。
それは互いに同じだったのかもしれない。
「三郎…」
と、竹谷が名前を呼んでそっとそのほほに触れる。
ん、と小さくうなずけばそのまま竹谷は三郎の顔に自分のそれを近づけた。
そのまま互いに目を閉じて、唇を合わせる。
離れる時に克ちあった視線がどこか恥ずかしくて、互いに小さく笑いをこぼした。
遠くで「竹谷先ぱーい、どこですかー?」という三治郎の声が聞こえて、あ、と竹谷が声をこぼした。
「…ほら、行けよ。後輩が呼んでる」
と、三郎が言えば竹谷が困ったように眉根を寄せた。
「あんまり、行きたくないけど…」
「先輩が後輩、ほうっておくのはダメだろ?私はまだしばらくここで昼寝してるさ」
ひらりと一度手を振れば、竹谷の顔が遠のいていく。
わかった、という言葉を交わして彼は屋根から下りて行った。
また一人になって、三郎は仰向けに寝転がる。
やっぱり雲雀が鳴いて、今度はそれに下級生の遊ぶ声も混じった。
「やっぱり特等席だよ」
ここは、とそう言って彼は小さく笑った。

end

竹鉢です。この二人はいちゃ甘いちゃ甘と思って書いたらこんなことになりました(汗)
なんてこった!