日当たりの良い部屋
竹谷は忍術学園では珍しく一人部屋である。
と言っても、元からではなく最初は二人だった。
しかし、間で彼は脱落してしまい、その後も人数調整があったのだが、どういう訳か三年生の時くらいから今に至るまで部屋を一人で使用できている。
しかも嬉しいことに建物の影が全く入らない、とても日あたりのいい部屋だった。
それを周りも知っているのか、やたらとよく彼の部屋に集まろうとするのだ。
それでも今日は休日だというのに珍しく彼は一人だった。
扉を開けて、そこから布団を縁側に出しておく。
日当たりの良さのお陰でそれは夕方までにはふかふかで温かい布団へと進化するのだ。
それを楽しみに彼は一度布団とそこに出して、部屋を離れた。
三郎は暇を持て余していた。
午前中に終わらせてしまった仕事のせいで、雷蔵や兵助とは予定が合わずに時間をつぶせなくなった。
それで今度は竹谷がいないかと来てみたのだ。
その部屋の障子に手をかける前に、彼の眼には縁側に出された布団は目に入った。
日光を燦々と浴びて、それは心なしかふっくらしているようにも見えた。
「……」
三郎はそれをじっと見つめてしまった。
太陽はまだ南中してまもなくで、部屋の中の気配を探ってもいる様子はない。
しばし、考えるように見つめた後、彼はその布団の隣へと腰をおろした。
「あ、雷蔵も今委員会終わったのか?」
長屋への廊下を歩いていれば、後ろからよく知った声で話しかけられた。
あぁ、と振り返ればそこには片手をあげてこちらに向かってくる、兵助の姿があった。
「うん、ちょうど今ね。兵助も、委員会の帰り?」
「あぁ、出庫伝票をいくつか書かないといけなくなってさ」
「お疲れ様」
「そっちもな」
そんな会話を交わしながら廊下を歩いていれば、ふとその縁側に一人倒れているような影を見つけて、雷蔵が足を止めた。
あれ、と小さくつぶやけば、それは自分と同じ顔をした親友で。
彼は竹谷の部屋の前で、そこに出されていた布団に頭を預けて寝息を立てていたのだった。
「…三郎?寝てるの?」
もしかして、と彼の顔を覗き込むように身をかがめればそこには気持ちよさそうに寝息を立てる自分と同じ顔があった。
「安眠真っ最中って感じだな」
「ここハチの部屋の前じゃない。じゃあこれハチの布団?」
「ってことになるんじゃないのか?」
ふつうは、と言いながら兵助は布団をはさんで向こう側に腰をおろした。
ぽふ、とその布団に手を載せればぱちとその大きな目が瞬いた。
「兵助?どうしたの?」
「あ、いや…なんか、この布団すごく寝心地がよさそうで」
「そうなの?」
そう言って、雷蔵もその布団にぽふと手を乗っけてみる。
中の綿は日光を浴びて気持ち良く膨れ上がり、柔らかい弾力でもって二人の手をはじき返すのだ。
「これは、三郎がここで寝るのわかる気がするなぁ」
「私も眠くなったよ」
そう言いながら、兵助もぽふりとその布団に頭を載せてしまった。
「えー…ここで寝るの?」
「気持ちいいよ?」
と言われれば、雷蔵も半信半疑、三郎の隣に頭を乗せた。
目の前では気持ちよさそうにその肩が上下していて、寝む気を誘われてしまう。
雷蔵と兵助と、二人の瞼がくっつくのにさほど時間など掛からなかった。
夕方、部屋を空けていた竹谷が戻ってすぐに目にしたのは、自分の布団に頭を乗せて気持ちよさそうに寝入っている友人三人の姿だった。
珍しく遊びに来ないと思ったら、と彼は買ってきた団子の包みをそっと先に部屋に置く。
せっかくだからみんなで食べようと思っていたのだけど、これなら起こすのが先かと。
そして、彼は一気に全員起こしてしまおうと、その布団を引っ張るために手をかけるのだった。
end
日当たりのいい部屋というよりは、よく干された布団がメインとなっておりますけれども…!!
5年生の中で一番寝るのが好きなのは鉢屋だと思っています。だって、アニメでふつうに昼寝してたんだもの!雷蔵は迷い疲れて寝ていましたが(笑)あ、部屋わけ関係は本当にねつ造なので。一人部屋だったらいいなぁという管理人の妄想です。